愛に恋

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家族愛―東條英機とかつ子の育児日記・手紙より 東條由布子

 
監修は東條英機の孫で東條由布子となっているが、英機の長男、英隆氏の長女由布子さんは2013年2月13日に逝去された。
 
本書はタイトルが示すとおりの「育児日記」で、どちらか一方というわけではなく、夫婦で長男英隆誕生の喜びから育児の大変さを慈愛に満ちた文章で綴っている。
かつ子夫人は明治42年4月、日本女子大学国文科三年生の時、学生生活を続ける条件で嫁いできたが東條家は13人の大家族。
 
18歳の新妻は毎朝5時に起き、13人分の食事を作り、夫の身の回りの世話、掃除、洗濯を済ませて通学、恐ろしき明治ですね。
当時の英機はまだ陸軍歩兵中尉。
貧乏少尉、やりくり中尉、やっとこ大尉なんて揶揄された時代で夫はまだ24歳。
日記には世相、政治、軍事の記述は殆んどなく、専ら子育てに専念する夫婦本来の姿が書かれている。
 
まだ乃木将軍自刃前で英機の父英教も登場するが、この人は大変な秀才で陸大第1期の主席卒業生。
英教は大正2年に病没し、息子の行く末など知る由もないが、一見、平凡な軍人夫妻の愛と幸福に満ちた日記と書簡集。
後の東條家の運命など誰も知らない時代、結果の定まった今日から見ると、こういう日記を読むのも何か不思議な気持ちがする。
 
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