愛に恋

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肉体の学校 三島由紀夫

 
自殺直前の有島、芥川、太宰の評伝には必ず女が出てくるが、何故か三島には、それらしき女性は出てこない。
専ら、右翼、楯の会、自決である。
三島と言う人はいったい、どの程度、女性経験があったのだろうか。
この小説は恋の駆け引きをメインに書かれているように思うが、どちらかと言うと通俗小説の部類に入る。
 
文豪の純文学というものは殆ど新潮文庫から出ているが、その選に洩れた菊池寛の『真珠婦人』や川端の『美しさと哀しみと』、そしてこの『肉体の学校』などは恋愛がスリリングで面白い。
 
刊行は昭和39年とあるから、かなり古い本だ。
簡単にストーリーを書くと、元華族で離婚後、優雅に暮らすファッション・デザイナーの妙子とゲイ・バーで働く、まだ成人して間もないやさぐれ男の千吉。
金の為なら男女構わずベッドを共にするこのハンサム・ボーイと火遊びのつもりで始まった付き合いがいつしか嫉妬を伴う関係に変化していくあたりなどは、作家として、なかなか遣りての妙を感じる。
 
歳の差もあり、妙子は男を甥という名目で同居させるが、その男に同世代の彼女が出来たことから節子の女としてのプライド、度量、潔さが試される展開に読者は否応なしに引き込まれていく。
ひとりの女として涙、未練なしに年若い男を捨て去って行く勇気が試される瞬間。
内容的には決して古さを感じさせない物語だが、作品の知名度はあまり知られていないような気もする。
 
とにかく、三島の思想哲学とはまったく無縁なこの小説は、なかなかにいい!
 

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Pink Martini Amado Mio

 
私はマンションの1階に住んでいるのだが、冬になると結露に悩まされ、放置しておくと黴の元にもなりかねないので先日来、窓を少し開けていたら、ある日の事、見知らぬ猫がリビングに鎮座していた!
目が合った瞬間、私は驚いた。
転居以来、初めての珍客。
 
犬は人に懐き、猫は家に懐くなどと聞いたことがあるが、果て、この珍客の魂胆は如何に?
福を招くために来てくれた猫ならよいのだが。
その日は、何ら与える餌が無かったので手ぶらで帰ったが、どうも友好的とは思えぬ態度。
二日目、試しに魚の揚げフライを皿に置いてリビングに置いて待つこと暫し。
現れました、それも忍び足で。
 
さて、どうするか、当然の如くその場で食べていくものと思っていた私の浅はかさ。
魚を咥えるが早いか、まっしぐらに窓から外へ。
懐いてくれることを期待した私が馬鹿だった。
あれこそまさしく昔から言う泥棒猫。
 
明日の朝は小雨が降るような。
おやすみなさい。
 

私はその場に居た 戦艦「大和」副砲長が語る真実 海軍士官一〇二歳の生涯 深井俊之助

 
歴史を作る者、または変える者とは常に決断であると言っても過言ではない。
古くは日露開戦を控えて編成された連合艦隊司令長官は常備艦隊司令官であった、薩摩閥の日高壮之丞が、その任に当たるのが常道だったが、山本権兵衛海軍大臣は敢えて日高を更迭し舞鶴鎮守府司令官の東郷平八郎を抜擢した。
指導部のみならず、不安を抱えた明治天皇からの御下問に対して山本はこう答えた。
 
「東郷は運のいい男ですので」
 
そして日本海海戦は大勝。
下って真珠湾攻撃の南雲中将の決断はどうだったか。
第三次攻撃を要請した源田実中佐の進言は聞かず艦隊は岐路に着いた。
敵の空母に発見される前に退却する。
確かにそれも一つの手だが真珠湾で壊滅状態にあったアメリカ太平洋艦隊に留めを刺す絶好のチャンスでもあったが。
ミッドウェイ海戦での南雲長官の決断は。
あればかりは痛恨の一事で、これ以降攻守逆転となってしまった。
 
辻参謀はどうか?
「作戦の神様」などと言われながらノモンハン事件ガダルカナルの作戦失敗など自らの責任は取らず指揮系統を無視した独善的な指導で部下へ責任押し付け、自殺の強要などで悪名高い。
 
牟田口廉也中将の場合は?
インパール作戦を立案して多くの将兵を死地に送り、戦後自決もせず、「あれは私のせいではなく、部下の無能さのせいで失敗した」と抗弁し続けた。
太平洋戦争中、あれほど無謀な戦いもあるまいに。
 
余談が長くなったが、この書は今日まで戦史の謎と言われる「栗田艦隊、謎の反転」について、何と当時、戦艦大和で副砲長の任に当たっていた未だ102歳で存命する深井俊之助氏が書かれた本で非常に興味深い。
栗田艦隊、謎の反転とはアメリカ軍の作戦をレイテ島を足掛かりにフィリピンの奪還と判断した大本営が立案した捷一号作戦と言われるもので計画ではこうある。
 
空母四隻からなる小澤中将率いる囮部隊がルソン島の北東海面に進出し米機動部隊に攻撃を懸ける。
16隻の空母を持ってレイテ湾に展開するハルゼー機動部隊は日本の主力は小澤艦隊と判断し全艦隊に追尾を命ず。
 
彼我の戦力の差は歴然としており、日本は虎の子の空母4隻を失ってでもこの作戦を成功させたい。
フィリピンは重油の貯蔵庫でもあり、ここを失うことは致命傷に成り兼ねず日本海軍は捨て身の戦法に撃って出た。
ハルゼーが小澤艦隊壊滅のため全力で北へ向かっている間にレイテ湾に上陸した米軍を大和、長門の強力な艦砲射撃で木っ端微塵にしようという作戦だった。
 
命令では昭和19年10月25日早朝、レイて湾に突入。
午前11時、栗田艦隊はレイテ湾まで2時間の距離に接近。
同時刻、ハルゼーは小澤艦隊を攻撃中。
仮に急を聞き付けレイテに戻ったとしても、既に間に合わない時刻。
我に勝機来たり!
ところが午後1時10分、栗田艦隊は大本営及び全軍に対して下記の電報を発信。
 
第一遊撃部隊はレイテ泊地突入を止めサマール東岸を北上し敵機動部隊を求め決戦
 
その時、命令に愕然として上官に迫ったのが著者の深井俊之助氏である。
共に乗艦していた宇垣纏中将は最後まで「南に行くのではないのか」と何度も言っていたとか。
もし、艦隊の全指揮権を宇垣中将が握っていたら、或は歴史は変わっていたかも知れないと後世言われているが。
著者が最後まで疑っていた出所不明の電報。
 
「敵、大部隊見ゆ」
 
この一本の電報によって栗田艦隊は反転、突入の機会は永久に失われた。
栗田長官は戦後、あまり多くは語らず、レイテ戦の後は陸上勤務となり替わって長官になった伊藤整一中将は沖縄特攻作戦で大和と運命を共にした。
宇垣中将も玉音放送後に最後の特攻として出陣。
謎は残る。
果たして誰が「敵、大部隊見ゆ」の電報を送ったのか。
 

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Ain't No Way  Aretha Franklin

三人のお母さんと一人のお父さん。
 
先日、車椅子に乗せられ娘さんに押されながら病院へ向かう煙草屋のお母さんを久しぶりに見ました。
5年程前までは会うと必ず同じ話しをしていましたが、それでも一人で食堂に行けるほど元気だったお母さん。
娘の頃に父と一緒に富士山に行った話と戦時中、三菱の女子挺身隊に従事した話しが好きで嬉しそうにいつでも話していたお母さん。
しかし、今は私を見ても誰だか分からなくなっていました。
 
私の大好きなコーギー犬の飼い主のお母さん。
年は80代と聞いています。
以前は毎日、愛犬の散歩でいつの間にか私と犬は大の仲良しに。
そのお母さん、ここ3年程ですっかり痩せて一年程前に家で転倒。
病名は分かりませんが最近は肺炎が治らず毎週金曜には病院通い。
愛犬は27㌔もある肥満体なので最近は散歩に出かける事も稀になりました。
 
私のマンションの二階に住んでいる75歳のお母さん。
3週間前ほどだったか部屋の前で倒れ込んで同マンションの女性が二人がかりで部屋に引き摺りこもうと力づくで引っ張り込んでいましたが痩せているくせに二進も三進も行きません。
日頃仲良くしているので私も加勢に参上。
しかし、これが滅法重い。
どういうわけが手足が全く動かない。
腰痛の私も、こうなっては仕方ありません。
渾身の力で抱きかかえやっとこさ部屋の中へ。
 
しかし、明るい所でお母さんの顔を見ると何やらホッペが赤い。
これは熱があると思い早速計ると8度6分。
アイスノン、熱さましシートで取り敢えず寝かせ、10時に見に来るからと言付けしたものの何か気になる。
7時半に行ってみると絨毯の上にオシッコをした模様。
これは一大事。
 
「お母さん、救急車呼ぶよ」
 
と云うものの。
 
「ちょっと待って」
 
の、一点張り。
幾ら説得しても拉致があかず。
取り敢えずは一端引き下がり、更に9時半に訪問。
するとリビングまで這って来て何とかトイレに行こうとした様子がありあり。
結局、立つことが出来ずリビングでお尻を半分出したまま排泄。
私はお母さんを後ろから抱いたまま約30分、説得。
明日はリハビリ科に行くと云うお母さんを、今はそれどころではないと強く熱弁。
漸く説得に応じ救急搬送。
未だ退院ならずも、あの時点で熱は9度4分。
後で分かったことだが病名は肺炎とリュウマチ
一刻を争う状態だったとか。
 
饅頭屋のお父さん、数年前に家で転倒して以来、徐々に痴呆症が進み、5年前の大晦日には一緒に町内を火の用心に廻ったのに今は車椅子生活で、私を認識することも出来ない。
今年もまた12月がやって来た。
三人のお母さんと一人のお父さん、年を越せるんだろうか。
心配になってきた。
しかし、そんな私に先日、妹がラインでこう入れて来た。
 
「兄ちゃんも独り住まいだから心配。何かあったら直ぐ連絡頂戴よ」
 
そうか、人の心配ばかりしている年齢でもないということか!
みなさん、元気で年を越しましょうね。
今日のおやすみ前の1曲はこれ!
 

昨夜のカレー、明日のパン 木皿泉

 
以前、直木賞を取材した番組をそれとなく見ていたら、私の知らない女流作家がこんなことを言っていた。
 
「今の時代、直木賞本屋大賞の何れかを獲らないと絶対だめ」
 
つまり話題性がないと売れないということらしいが、時、恰も又吉君の『火花』が売れている時期。
その人は毎回、直木賞にチャレンジしているらしいが、未だ念願叶わず、日々、精進の毎日だとか。
 
ところで、この風変わりな『昨夜のカレー、明日のパン』というタイトルの答えは小説の中に無論書いてあるのだが、それよりも作者の名前が気になった。
実はこれ、夫婦共作のペンネームだとか。
夫、和泉務、妻、妻鹿年季子、脚本家らしいが、そういえば数年前、『野ブタ。をプロディース』というこれまた変わったタイトルの本が出た思っていたが、同じ著者らしい。
 
うちの街の小さな古本屋に行ったおり見つけたもので硬いノンフィクションの合間にでも読むかと気軽な気持ちで買ったのだが、どうしてどうして意外に面白い。
それもそのはず、帯にはこう書かれている。
 
本屋大賞 第2位の感動作!」
 
25歳で他界した夫、そして未亡人となったテツコと夫の父、ギフ(義父)との共同生活に関係する従兄弟、友人、亡妻、恋人らと織りなす人間模様の観察力が実に上手く、特段、何かが起こるでもない日々の生活を活写して味わい深い。
単調な日常を切り取って小説にするとは、こういうことなんだという見本のような話しだった。
 
おそらく、古本でなければ買わなかったろうが非常に得したような気分になれた。
人はとにかく訳ありで生きている。
それを浮き彫りにさせて洞察力の凄さをペンにするのが小説家の小説たる所以。
お見事でした。
 

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Leona Lewis Run

ナポレオンもヒトラーも嫌いだった冬将軍の到来です。
ナポレオンはクトゥーゾフ将軍にモスクワで苦杯を嘗めスターリングラードではパウルス元帥がソ連軍に降伏。
私はインフルエンザ将軍に負けないよう毎夜音楽で乾杯。
明日も寒いようで、おやすみなさい。
 
 
 

古本病

武士道とは死ぬことと見つけたりと『葉隠』は書いているが、絶版道とは追い詰めることと見つけたりというのが最近の私の、ころころ変わる座右の銘
何代にも渡って受け継がれて来た古書。
先の持ち主は如何なる理由で手放したのか。
少なくとも我が思いと同じ理由で購入し思いの丈を胸に悩んだ末の売却だったか。
或はお迎えが来たのだろうか。
 
先代の持ち主を知らず、後代の行く末も分からぬ流転の遍歴。
本にとって書棚はかりそめの旅籠。
何れはまた旅立つ日が必ず来る。
だが、今暫し我が家の本箱を飾りたまえ。
それも多少の縁。
思い出は消え去ったいにしえ。
古書にとっての充足が私にとって英気を養う時間。
 
絶版道とは追い詰めることと見つけたり
 
出来るだけ自分を追い詰めその先のことは・・・。
活字中毒、いやこれからは古本病に罹る番。
焼けのやんぱち日焼けの茄子、あとは野となり山となるも一期一会の別れかな。
で、早速にも脚は古書店に。
 
 
               面白いと聞いていたので一度、読んでみようと!
 

                 徳田秋声私小説は是非読まねばなるまい。
 

               木村功の夫婦愛を知りたくて以前から探していた本。
 

               ロダンとの間に何があったのか、今度こそ読んでやる!
 
                       以下は新刊本。
 

                文庫化されたので、これを機会に読破しなくては。
 

                 最後はちくま文庫の復刻版、阿川弘之
                 しかし、先日買った古本も全く手つかず。
                 大丈夫かオイ!
                 何しろ今読んでいる本が長すぎてなかなか読み切れない。
 
                     旅出れば 名所旧跡 古本屋
 

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