愛に恋

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昨夜のカレー、明日のパン 木皿泉

 
以前、直木賞を取材した番組をそれとなく見ていたら、私の知らない女流作家がこんなことを言っていた。
 
「今の時代、直木賞本屋大賞の何れかを獲らないと絶対だめ」
 
つまり話題性がないと売れないということらしいが、時、恰も又吉君の『火花』が売れている時期。
その人は毎回、直木賞にチャレンジしているらしいが、未だ念願叶わず、日々、精進の毎日だとか。
 
ところで、この風変わりな『昨夜のカレー、明日のパン』というタイトルの答えは小説の中に無論書いてあるのだが、それよりも作者の名前が気になった。
実はこれ、夫婦共作のペンネームだとか。
夫、和泉務、妻、妻鹿年季子、脚本家らしいが、そういえば数年前、『野ブタ。をプロディース』というこれまた変わったタイトルの本が出た思っていたが、同じ著者らしい。
 
うちの街の小さな古本屋に行ったおり見つけたもので硬いノンフィクションの合間にでも読むかと気軽な気持ちで買ったのだが、どうしてどうして意外に面白い。
それもそのはず、帯にはこう書かれている。
 
本屋大賞 第2位の感動作!」
 
25歳で他界した夫、そして未亡人となったテツコと夫の父、ギフ(義父)との共同生活に関係する従兄弟、友人、亡妻、恋人らと織りなす人間模様の観察力が実に上手く、特段、何かが起こるでもない日々の生活を活写して味わい深い。
単調な日常を切り取って小説にするとは、こういうことなんだという見本のような話しだった。
 
おそらく、古本でなければ買わなかったろうが非常に得したような気分になれた。
人はとにかく訳ありで生きている。
それを浮き彫りにさせて洞察力の凄さをペンにするのが小説家の小説たる所以。
お見事でした。
 

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