愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

「ムーンライト・セレナーデ」 ねがわくは花の下にて春死なむ

文治六年二月十六日、満月の日、桜が満開の昼下がり、眠るように静かに、かの西行法師が河内弘川寺の草庵で亡くなった。生前詠んだ「ねがわくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」望月というのは旧暦2月15日、釈迦のなくなった日のことでだ。さすがにいい歌ですね。西行は二十歳いくつかの若さで、武門の名家の北面武士の身を捨てて突然出家したという。可愛い盛りの子供もおり、将来を嘱望され、周囲はもとより世間もたいそう驚き、何が理由かと憶測したが、本人が語ることは終生なかった。「いざこころ花をたづぬといひなして吉野の奥へ深く入りなむ」「あくがるる心はさても山桜散りなむのちや身にかへるべき」なかなか古人(いにしえびと)のようには歌えませんね。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。「たそがるる夏も近しとセミのこえ抜け殻おもいわが身いつまで」おやすみなさい、また明日。