愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 美の最上理念は白であった

藤原定家の美の最上理念は白であった。さらに定家を崇拝し、自らは能の大成者となった世阿弥の美の最高至極は、やはり白であった。彼らが、美の最高位を白と観たのはなぜだろう。彼らは、中世の争乱、無常の嵐に吹き曝されて生きてきた。王朝貴族の崩壊を目のあたりに見ていた。移ろいゆくものに滅びの寸前に、彼らの美はあったのだ。白という色が、どんな色をも含んでしまうことを、彼らは実感として観たに違いない。幽玄という語のそもそもは黒または暗色をさしていた。それがやがて妖艶につらなることを考えるといい。白を無色というときの無は、無限の無におなじであることを識らねばならない。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。私が最上と思う言葉は「滅びの美学」と思うように、ここに書かれた定家と世阿弥の言葉はそれに通じるものがあるだろうか。おやすみなさい、また明日。