愛に恋

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ダミアンの公開処刑

ダミアンなんていうと「オーメン」なんかを思い出してしまうが、ダミアンなる人物は実際に存在した。1757年にルイ15世を殺しそこなった暗殺犯だ。当時、彼の処刑はかなり告知されていたので、この一大イヴェントを目撃しようと、ヨーロッパ中から情報に敏感な物好きたちがパリのグレーブ広場にやってきた。そのなかにはカサノヴァもいて、もっとも良い見物席を確保するために、わざわざ広場に面した部屋をこの日のためだけに借りている。ダミアンを乗せた護送馬車が街中を練り歩き、その後をゾロゾロと人々がついて歩く。何時間もかかることは分かっているので、パンやチーズ、ワインなどを皆手に提げている。広場には出店もいくつか並んでいる。一行が到着すると、司法官がダミアンの罪状を読み上げる。赤く熱した鉄棒や煮油などを用いて、時間をかけて刑がおこなわれる。ダミアンは次第に精神に異常をきたしていく。口から泡を吹き、わめき、挑戦的なうわごとを言いはじめる。それからようやく、手足に綱がかけられ、馬が繋がれていく。一度目、三頭に引っ張れれて一頭がころんでしまう。やり直し。二度目、今度も息が合わない。そして三度目も。執行人たちは、囚人の手足がパツンと派手に胴体から離れるように、すでに何度も引っ張られて脱臼し、伸びきったいるダミアンの肩と股にナイフを入れ、腱だけを切断する。四度目、ようやくダミアンの断末魔の叫びとともに体をバラバラになったときには、処刑開始から4時間が経過していた。