最近、梯久美子(かけはし くみこ)というノンフィクション作家に興味を持っている。
戦後生まれの55歳だが、女性には珍しく栗林中将を題材に本を書いたことが私の触手を動かした。
梯久美子とはいったい何者なのか!
あまりにも素晴らしい着眼点に俄然、闘志が湧いてきた。
特攻隊員として死を覚悟の待機中、島で巡り合ったのが、後の妻となるミホなのだが、昭和52年刊行した『死の棘』が大ベストセラーになり戦後小説の最高峰と言われ、日本文学大賞、読売文学賞、芸術選奨を受賞、評論家の奥野建男は「私小説の極北」とまで云わしめている。
作品は映画化されカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、将に島尾文学の金字塔になった訳だが、実のところ、私は未読なのである。
何故か?
多くの読者の書評に慄いているからである。
曰く。
「5か月もかかった」
「疲れた」
「挫折した」
「読み切れなかった」
さもありなん、『死の棘』は620頁の長編で、もう、字がぎっしりで読み辛い。
しかし、『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読む為にはどうしても避けて通ることのできない関門だ。
更に、島尾の『死の棘 日記』と妻ミホの著書で第十五回田村俊子賞を受賞した『海辺の生と死』を読まなければ自分の中でこの物語は完結しない。
では、いったい、『死の棘』とは如何なる小説なのか?
簡単に言えば敏雄の浮気を日記で知ったミホが執拗に夫をなじり、際限もなく諍いを繰り返すうちに発狂、遂には夫婦で精神病院へ入院となった顛末が書かれている。
余談が長すぎてしまったが、今回の本はおそらく『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』を出版に関連して刊行されたものだろう。
作品集とあるのは昭和21年~47年までの作品の中からミホに関連した短編を選んで収録されているということかと思う。
相対的にミホという女性は相当な情熱家と言えばいいのか気性の激しさ、嫉妬深さが顕著で、終戦2日前の13日、島尾に出撃命令が下ると、ミホは島尾から貰った短剣を片手に最後の逢瀬のため浜辺に駆け付け島尾出撃を見と遂げて自らは懐剣で自害を計ろうとした。
凄まじい気概を感じるが結局、出撃がないまま終戦に至った。
しかし、発病後のミホは恐ろしい。
院内で取っ組み合い、こう暴言を吐く。
「どこまでもついて行ってやるよ。人を気違いにして置いて、もとにして返せ」
ともあれ島尾作品は噂に違わず読み辛い。
460頁のこの本は手古摺り遅々として進まない。
全く苦心惨憺であった。
偉そうに来年のミッションみたいにして書いたが以上4冊。
・死の棘 日記 島尾敏雄
・海辺の生と死 鳥尾ミホ
・死の棘 島尾敏雄
と読み切れるのだろうか。
凡そ、2000頁はあると思うが。