芥川龍之介が海軍機関学校英語教官を務めていた頃、昭和天皇がまだ摂政宮で横須賀鎮守府司令長官とともに見学に見えられた、芥川は同じ姿で講義を続けていたという。授業中に、軍港横須賀の海上から、大砲を射つ音が聞こえてきて、ガラス窓をビリビリさせることがよくあった。そういうときの芥川は、その音響に耐えられないような表情をしながら「いまごろ、ヨーロッパでは、ばかなことをしているんだろうな?」とひとりごとした。「どうしてばかなことなんですか?」と、生徒が気負いだって訊くと、「君には、それが分らんのか?人殺しをやっていることがばからしいことなんだよ」と、高飛車におっかぶせていた。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。漱石をはじめ、概して文士は戦争が嫌いだ。不思議なのは火野葦平を除けば文士で徴兵されたものや、あれほど激しい空襲で死んだ作家もいなかったことは、日本にとっては救いであった。私の父などもあの戦争で死んでいたら、今の私は存在しなかったわけで、人間の運とはいかなものだろうか。おやすみなさい、また明日。
古本屋台 Q.B.B.,久住 昌之
日頃マンガを読まない私だが、このタイトルをネットで見た関係上、知っていたので古書店で買ってみた。四コマ漫画ならぬ二ページマンガで、古本を積んだ一杯飲み屋が、定位置ではなく、好き勝手に場所を日夜移動するので、この屋台のファンが今日は何処に行ったと探しながら飲み歩くという設定だ。おかしなことに屋台のオヤジさんは「うちは飲み屋じゃねえ」といってコップに1杯しか飲ましてくれない。話といえばたわいもないもので、オヤジさんはどちらかというと無口。常連同志が少し会話するという塩梅だが、この本はシリーズ化しているのか第二段もあるらしい。といっても古本屋に下りて来るかどうか分からないが。私にしてはそんなに面白ものでもなかった。
ポール・セザンヌ Part.22
《大きな松の木と赤い大地》(1895年) エルミタージュ美術館
《レスタック湾》(1879-1883年) フィラデルフィア美術館
《ガルダンヌから見たサント・ヴィクトワール山》(1886-1890年) ホワイトハウス
《男の肖像》(1866年) 個人蔵
《マルセイユ湾、レスタック近郊のサンタンリ村を望む》(1877-1879年) 吉野石膏コレクション (山形美術館に寄託)
《果物籠のある静物》(1888-1890年) オルセー美術館
《ザクロと洋梨のあるショウガ壷》(1893年) フィリップス・コレクション
《庭師 ヴァリエ》(1906年頃) テート・ギャラリー
《森の中の道を曲がって》(約1873 ~ 1875 年)
《リンゴと洋ナシのある静物》(1891-1892年頃) メトロポリタン美術館
セザンヌさん、どうもアナタの絵は果物と山が多いような。私としては少々退屈なんですけど。それでも天下のセザンヌですからね、もう少し鑑賞してみますよ。
「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。 『フランス革命下の一市民の日記』
1793年1月16日、ルイ16世に判決が下された。激怒する民衆の中で、3日間にわたっておこなわれた一連の投票結果は、次のような数字となってあらわれた。投票総数721票。過半数361票。無条件死刑に投票した者361名、反対360票。しかし、執行猶予の条件つき反対の26票を、投票検査人が非常にも361の賛成票に加えたため、賛成387票、反対334票になった。いずれにせよ、賛成361票はすでに必要過半数に達していた。しかしながら、正確にいうとわずか1票が、フィリップ平等公の1票が、この結果を逆転することも十分ありえたのである。それに、多くの議員が、フィリップ平等公と同じように「ルイ16世の運命は、とりもなおさず王を裁く我々の運命である」と知って、怯えて投票した。ロスピエールは議員たちに向かって言った。「諸君はひとりの人間の判決を下すのではない。国家の救済策を講じているのだ」ダントンも、皮肉を交えて言った。「我々は国王の裁判なんか望んでいない。国王を殺したいのだ」「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。このことは以前読んだ832頁にも及ぶ『フランス革命下の一市民の日記』に書かれている。たった1票が自分の運命を左右したと当の本人が知っていたか否か分からないが、私なら反対だな。おやすみなさい、また明日。
戦場のアリス ケイト クイン
本書は女性作家が書いた650頁にも及ぶ長い本で、実在のイギリス諜報部員をモデルに、第一次大戦下の1915年にドイツ軍ご愛用の高級レストランでウェイトレスとして働くイヴ・ガードナーと、第二次大戦中に行方不明になった、従姉のローズを探しにフランスに行く妊娠中の19歳のシャーリー・セントクレアを主人公に、1947年と交差させながら展開していく実にスリリングな小説で、いつの間にかイヴ・ガードナーに感情移入していく、久々に興奮した翻訳小説だった。女性スパイの厳しい現実、間違えれば死刑もあり得る綱渡りの職業にいつしかのめり込んで行くイヴ。ドイツ軍側もスパイ摘発に血道を上げる命を懸けたぎりぎりの綱渡りに、誰もがイヴの姿に感動するだろう。物語の最終は作中の現代である1947年に結末を迎えるが、イヴとシャーリーがどうなっていくのかはお楽しみ。
ジャクソン・ポロック 1912年1月28日 - 1956年8月11日
《ナンバー・341949》
《ワンナンバー31》(1950年)
《Number 21》
《フリーフォーム》(1946年)
《熱い目》
《魅惑の森》
《雌オオカミ》
《月の女が円を切る》
《香気》
《五尋の深み》
ジャクソンさん、アナタの作品は何だかさっぱり解りません。
芸術というのは並みの人には出来ない作品を生み出すものだと理解しておりますが、この手の絵だったら私にも出来るような気がするんです。どうでしょうか、何か反論があるなら聞かせてください。