居眠り狂志郎の遅読の薦め

未だ休読日に至らず

レオン・スピリアールト

本日、2回目の投稿
 
 
美術評論家坂崎乙郎という人は絵画と精神分析学についてこんなことを言っている。
 
画家の生涯と制作との関連を調べる場合に、精神分析の助けを借りるのは、昨今ではほとんど一般のしきたりとなっている。というのも、芸術家の深層を探るのに、単に美術史的な方法だけでは不充分で納得できない部分もありうるのだ。
 
例えばこのレオン・スピリアールトの「めまい」はどうだろうか?
こんな想像性はちょっと常人には浮かばないが。
単純な構造だが何か怖ろしい。
強風の中を頂上まであと二歩!
下界の風景も女性らしき人の顔も分からない、それ故に幻惑させられめまいを誘発するのか。

テロリストのパラソル 藤原伊織

 
江戸川乱歩賞直木賞の同時受賞はこの作品を於いて他にないらしいが、そこまで言われたら、いったいどれだけ面白いのってなわけで私も手を出してしまった。
作品自体は95年と最近のものではなく作者も既に故人となっている。
 
事件発生から解決までの時間は至って短くドラマはスピーディな展開で繰り広げられる。
新宿中央公園で日中、ちびりちびり洋酒を呑むことを日課にしているアル中のバーテンダー
その目の前で起きた突然の爆弾テロ。
死傷者は50人以上。
 
しかし妙なことに20年以上会ってない学生時代の左翼仲間、桑野と、その当時同棲していた優子がそこに居たことを後で知る。
バーテンダーの菊池と彼ら2人の接点は、22年前に切れていたはずなのに同日同刻、偶然にも同じ公園で爆弾テロに遭い桑野と優子は即する死。
こんな奇妙なことがあろうかとアル中の菊池は事件解明に乗り出す。
 
スリリングな展開は非常に面白いが主な登場人物総てがまるでジェームス・ボンドばりの頭の回転の良さ。
頭脳明晰で、ずば抜けた行動力は、コロンボ刑事も舌を巻くほどで、ラストの方はゆっくりじっくり読まないと絡まった紐が解けなくなってしまうほどの急転直下。
確かに面白い。
しかし、何というか全共闘世代の生きる張り合いの無くなった今日の、平和な日本の中で明滅している街灯のような侘しさを感じる。
 
男が全共闘時代に「相手」にしたものは戦後民主主義の否定でも、自己否定でもなかった。それは、「この世の悪意なんだ。この世界が存在するために必要成分でさえある悪意。空気みたいにね。その得体の知れないものは、ぼくらが何をやろうと無傷で生き残っている」
 
なかなか含蓄の深い言葉だ。
多くの審査委員や批評家を絶賛させたのは単にダイナミックなストーリーだけではなく、あの時代のその後に訪れる、通底する遣る瀬無さみたいなものに共感した為もあったのだろうか。
 

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Woman in Love

本日、第二弾の記事。
 
アレサ・フランクリンの死は昨日のNHK7時のニュースでも報じられていたように、その死の大きさを物語っているが、私の知りうる限り、大統領の追悼談話を聞くのはエルビスジョーン・ウェイーンなどよっぽどアメリカ社会に影響を与えた人に限られている。
しかしそれ以後、エラ・フィッツジェラルドフランク・シナトラ、サミーデイビスjr、マイケル・ジャクソンと名だたる大物の死去に伴い、アメリカの偉大さを象徴するようなエンターティナーで誰が残っているのか、アレサに匹敵するような存在はと考えてみると、やはりバーブラ・ストライサンドではないだろうか。
 
奇しくも二人は同年生まれの76歳。
アレサ・フランクリン   1942年3月25日
 
今更、バーバラの栄光をここで書いても仕方ないが、彼女はアメリカ・ショー・ビジネス界で最も成功した女性と言われるぐらいで、あらゆる賞を総なめしているばかりか、文民に贈られる最高位の大統領自由勲章を受章している。
まあとにかく、映画監督、女優、脚本家、製作、作曲、歌手、ミュージカルと如何なく才能を発揮し、こんな人は他にチャップリンぐらいしかいないだろう。
最近はさすがにお年を召して、その姿を見ることはなくなったが、今回のアレサの死を聞いてどのような感想を持っているのか興味深いところだ。
 
バーバラ、いつまでも元気でいてくださいね。
それではバーブラ・ストライサンドでWoman in Love。
 
 
 

椎の若葉に光あれ 葛西善蔵の生涯 鎌田 彗

 
芸術作品と言えども一世紀も経れば評価も定まり、現在の価値と相容れぬ作品などは自然淘汰され、作者と共に忘れ去られていく運命にあるようだ。
葛西善蔵、今日、彼の文学が読まれることはあまりないだろう。
例えば葛西を取り巻いていた当時の貧乏文士たち。
 
舟木重雄、広津和郎、相馬泰三、峰岸幸作、谷崎精二 宇野浩二嘉村礒多牧野信一、間宮茂輔、諏訪三郎、川崎長太郎などで辛うじて残ったのは広津と宇野ぐらいか。
葛西と同じ津軽出身の作家ではどうだろうか。
 
石坂洋次郎が持て囃された時代は昭和30年代のことで、今日では彼の作品を読む者もまず稀だ。
彼自身も言っているように通俗小説としての芸術的な価値は少なく将来的には消えていく作家のように思う。
 
その石坂洋次郎葛西善蔵に初めて会った日は有島武郎と波多野秋子が軽井沢の別荘で縊死しているのが見つかり新聞で大々的に報じられたその日らしい。
 
余談だが、本書を読んで残念に思うことが一つある。
石坂が葛西の住まいを訪ねた日、それは大正12年7月8日だが、葛西の住まいは鎌倉建長寺塔頭のひとつ宝珠院。
建長寺の境内を通り抜けて300メートルほど坂を登り途中50数段の階段があり、その奥まった暗い住まいが宝珠院で現在もそのままにある。
その建長寺に参詣したことがあるだけに悔やまれる。
まあ、詮無き事を言っても仕方ないが、葛西の余りに無頼派的な生き方には流石に首を傾げる。
 
「生活の辛酸は苛烈な記録の酵母菌として、望むところであった」
 
と著者は言うが無法無残な生活たるや如何なものか。
妻の実家から援助を受け、妻子は郷里に残し、誰彼構わず借金を頼み首も回らず。
太宰は「悲しみは、金を出しても買え」と言っているが、それにしても度の過ぎる飲酒と貧困。
宝珠院に住むことになったきっかけは、建長寺正門前にあった龍王館からの紹介。
3度の食事は龍王館の親戚茶屋、招寿軒の娘、「おせい」が365日岡持ちを提げて運び、毎夜12時頃まで葛西の酌にも付き合ったとある。
そしてそこは男女の仲。
田舎に妻子を残したまま、おせいとの間に2人の子供を作ってしまった。
年若い石坂洋次郎はこんなことを書いている。
 
「ああ・・・文学とはかくも深刻な体験なしには生み出せないものなのか」
 
戦前の文士は誰も似たようなもので貧困、借金、失恋、駆け落ち、心中、病苦、自殺と仲間内での小説の題材は事欠かない。
ある友人と喧嘩した時などは、泥濘の中で互いの睾丸を握り合って罵倒し合うなど、今では考えられない生活が転がっているが、それだけ必至に生きていたとも言えるのかも知れない。
葛西は石坂に、
 
「人にキンタマもみせられないで、そんなことでキミ、いい小説が書けますか」
 
と嘯(うそぶ)いてる。
葛西の言う芸術とは、
 
果たして小説は妻子を路頭に迷わせても成立しうるか
 
と言うようなものだが、意外というか当然のように石坂洋次郎のような人より、このようなどうしようもない無頼派を伝記作家は好む。
その石坂洋次郎は葛西に散々振り回わされてやっとの思いで逃げ出すが、後世に生まれた私としては哀れさを誘うばかりで同情心が湧く。
おせいと葛西は喧嘩三昧の日々で、ある時、友人が葛西宅を訪ねてみると二人は取っ組み合いの最中。
ぼろぼろの丹前を着た葛西はおせいを殴ろうとするが、
 
「この糞ったれおやじめ、死にぞこないの業つくばりめ、さあ殴るなら撲ってみろ」
 
といいながら葛西を布団の上に押し倒そうとしていたとか。
14歳年下で背の低いおせいであったが既に結核と喘息に侵されていた葛西は、おせいに組み伏せられてしまう。
友人が割って入ったが何かその場の情景が目に浮かぶようで物悲しい。
それでも終生、葛西の元を離れなかったおせい。
宇野浩二は精神を病み、有島、芥川、そして牧野信一も自殺して葛西は結核に斃れる。
もう一度喀血したら最後と医者に言われ熱が38度あっても酒だけは愛した葛西。
芥川が死んだ翌年、7月23日永眠、享年41歳。
おせいこと、浅見ハナは葛西の死後60年以上も存命し、晩年は痴呆症を患っていたが、時折娘の家を抜け出し、タクシーに乗って建長寺へ、そして宝珠院の階段で蹲っているところを発見されたこともあった。
斯くも男女の間は物悲しい
二人の人生、偲びて何をか思わん。
 

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訃報 アレサ・フランクリン

 
二日ほど前から危篤の報が流れていたので、もう助かるまいと思っていたが、昨夜、一斉にTwitterで写真、動画がアップされ、ソウルの女王、人類史上最高の歌手とも言われるアレサ・フランクリンの訃報を知った。
まるで君臨するかのようにアメリカ音楽界に多大な影響を及ぼしたアレサ。
心よりご冥福を祈りたい。
 
ゴスペル仕込みの圧倒的な歌唱力、黒人女性ボーカルはあらゆる楽器を凌駕すると思っているので、その代表的存在を失うのは本当に寂しい。
彼女の歌は若い世代に受け継がれ消えることはないだろう。
何をアップしようか迷ったが50年前のヒット曲のカヴァーを取り上げたい。
チェイン・オブ・フールズ」(Chain of Fools)
 
合掌!
 

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お時間があればアレサも聴いてやっておくんなさいまし。 

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バンサン・カッセル

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本日、第二弾

私は個性派俳優が好きで昔から緒形拳、デ・ニーロの大ファンだが最近、封切られたポール・ゴーギャン扮するバンサン・カッセルの風貌を見て驚いた!

変われば変わるものだ。

今回は歴史上の人物とあって役作りも大変だったのだろう。

TSUTAYAで出たら見たいと思う。