愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 

人の心、ましや芸術家の心は推し量れるものではない。優れた芸術家は誰でも、心の奥底に、闇、を持って生きていて、たえずそれと格闘している人間である。早計に彼らの心を読むのは真に慎まなければならない。それにしても不可解な行動であり、謎である。小津のその行動には何か侘しいものがあり、それは彼の深い寂寥感から来ていることは確かである。謎というのは、松竹大船撮影所の前にあったレストラン「月ヶ瀬」の看板娘・杉戸益子を娘のように可愛がっていた小津が、佐田啓二と結婚すると聞いて「ああ、それは良かったね」と即座に賛成して式の日取りや仲人まで引き受けてしまったことである。益子は「ホッとするやら緊張がいっぺんに解けてしまうやらで、放心状態」になったと言っている。おかしいな、私のだって心の奥底に闇ぐらいある。間違っても嫌味ではない。然し、この私は、どういうわけか芸術家ではない。これはどういうことなんだ。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。世界は動乱の日々を迎えている。戦争、紛争、デモが各地に飛び火し、難民、移民で大揉めに揉めている。混迷のの時代がやって来たのか。おやすみなさい、また明日。