愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 西條八十の論文

大正四年、早大英文科を卒業するにあたっての西條八十の論文は、アイルランド文学のシングだった。シングの翻訳など一つもない中、芥川との間で応酬もあった。論文を書くために全作品を読みかつ論じるには長大な時間を要し、そして結局論文提出前夜になって、力尽き吉江孤雁教授のところへ相談に行った。すると吉江は「きみ、重い荷物を背負って峠に登る人が、もう一歩も進めなくなって、その荷物を投げ出しとするとき、そのときはきっと峠の天辺に近づいているときなんだよ」と励まされ、その夜、徹夜して書き上げたという。私にはそういうひと踏ん張りが欠けているんだな。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。また明日、おやすみなさい。