愛に恋

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「ムーンライト・セレナーデ」 御覺悟は宜うゴザリ升す歎

いざ駕籠に押し込められるという時、同心が「御覺悟は宜うゴザリ升す歎(か)と、寅次郎答に素より覺悟の事でゴザリ升す、各方(おのおのがた)にも段々御世話に相成升(まし)た」と言ったという。「処刑に立ち会った役人が『何か言いおきたいことなきや』と聞くと、松陰は『この期に至り格別申しおくことなし、が、お言葉に甘え、いざお斬り下されと申すまでは暫時おひかえのほどを』と言い、おもむろに水をおし戴き、三口飲んだあと声高らかに、辞世の詩を朗唱し終わると肩衣を脱ぎ、静かに膝の下へ敷物として『お役目ならば、さあどうぞ』と首をさしのべ斬らせた。吉田松陰、数え年三十歳。逍遥として死につくというのは難しいことですね。「ムーンライト・セレナーデ」のお時間です。それではみなさん、おやすみなさい、また明日。