人間、トシをとると「昨日は何を食べたか」は忘れてしまっても、遠い昔のことはイヤに鮮明におぼえているらしい。夜半、ベッドの中で突然「ああ、花売娘の役をやったっけ」とか「牛若丸にもなったなァ」などと、愚にもつかぬことを思い出したりする。
私はね、それまで利口ないい役ばっかりやってたんですよ。それを木下先生が書き下しで頭のいかれたストリッパー役にしちゃって(笑)。すばらしい木下先生の眼力でございます、私の本質を見抜いていたと申しましょうか(笑)。
田中絹代と
『われ等が教官』では、亡くなった丸山定夫さんの娘になって、琴をひいたが、生まれて初めての琴を演奏するのに、イキナリ宮城道雄さんのところへおけいこに通わせられたのにはおどろいた。
稲妻(1952)◆4人の子供の父親がみな違うという複雑な母子家庭で、母と異父兄姉たちの醜さに愛想をつかした末娘が、家を出て自立を試みるのだが......。浦辺粂子と。