「あっ姐さんこんばんは」
「あれ、千代之介かい」
「へえ。どこかお出かけで」
「ちょいとね大原まで野暮用があって、こんな時刻に行くことになったんだよ」
「そうですかい、お帰りは」
「明後日には帰るから心配いらないよ」
「へえ、お帰りになったらどうぞ家に寄って行ってくださいまし。茶のいっぺいぐらいお出ししますから」
「そうかい、じゃ遠慮なく寄せてもらうよ。お絹さんは元気かい」
「へえ、大事をとって中で休んでいますが、もうそろそろ床を上げようかなんて今朝も話していたところです」
「それは良かった。お大事にね」
「有難う存じます」