「えっ、何なに」「ちょっと、押さないでよ」「暑苦しいってば」「何やってんの」「知らないの」「これ何!」「バカだねアンタは」「えっ、だって知らないんだも」「トムとジェリーじゃないさ」「トムとジェリーってなに?」「こいつ、トムとジェリー知らないんだって」「遅れてる~ぅ」「面白いのこれ」「面白いから見てるんでしょ」「これ猫じゃないの」「だから言ったでしょ、トムとジェリーだって」「トムというのは何?」「煩い、トムが猫でジェリーがネズミなの」「もう静かにしてよ、聞こえないじゃないのさ」「ったくお前は引っ込んでろ」
こら、ばか。お前何吸ってるんだ。犬の乳だぞ。やめなさい、やめなさいってば。
「おかあちゃん、今日は外で遊んじゃダメなの」「ダメダメ。こんな暑い日に外で遊んだらスルメみたいになっちゃうからね」「スルメってなに」「分からないならいいから、とにかく今日は家の中で遊びなさい」「つまんないな」「いいから、おとなしくしていなさい」「お父ちゃんは」「また、隣のサリーちゃのところじゃないの」「サリーちゃん、サリーちゃんって、いつもサリーちゃんの傍にいるんだね、お父ちゃん」「あんな男は要らないよ。今度、新しいパパを見つけてくるから、お尻にハートのマークが付いているパパを見つけないとね」「うん」
「朝食はまだ。朝っぱらからキャットフードはやめてよ。もう食べ飽きたんだから」「何言ってるの、私が買って来るキャットフードは栄養満点の高級品なんだからね、贅沢言うんじゃないの」「いくら高級品でも、そう毎日毎日出されたら嫌になるのは当たり前じゃないのさ」「あら、お隣のミーちゃんなんか煮干しばかり食べてるのよ、生意気ね」「見てよこれ、わざわざフォークとナイフ揃えてあるじゃないのさ」「それはパパのハムエッグの為に用意してあるの。さあ、下に降りて。あっ、いいのがある。たまにはポチのドックフードを食べてみたら」
「重たいって」「眠たいんだよ」「こっちだって眠りたいんだよ」「君の背中が一番寝心地がいいんだよ」「とにかくさ、下りてくれないと眠れないよ」「頼むよ、昨日、あまり寝てないからさ」「馬はいつも立ってばかりだから疲れるんだよ」「僕だって走り回って疲れてるからさ」「そんなの知らないよ」「今日だけ、今日だけ頼むからさ」「もう、今日だけだよ」「助かった、ありがとう」
「煩い。ワンワン吠えちゃだめ。静かに寝なさい。おやつは3時になってから。それまでは大人しくしていなさいよ」「ウウウ」「何がウ―よ。騒ぐとおやつなしだからね。分かった。寝れないなら横になっていればいいのよ。とにかくね、私は忙しいから静かにしててね。また見に来るから、ちゃんと布団の上に居なかったら追い出すわよ。分かった」「ワン!」
「重たいんだよ」「頼むよ、向こう岸まで乗せてくれよ」「自分で泳げばいいじゃないか、ネコかきで」「あれは犬かきでしょ」「ネコは水が苦手なんだよ」「苦手なの!」「犬みたいに楽しく水遊びが出来ればいいんだけどね」「情けないな、これから鳥に優しくしろよ。特に鳩なんか取るなよ」「分かった、必ず守るよ」
「ちょっと、私は羊なんだよ、猫じゃないんだから間違わないでよ」「モフモフ」「いい加減にしてよ。ママは何処へ行ったの」「何処に行ったか分からないから」「だから何よ。私には関係ないでしょ」「関係あるよ、ママの姿が見えなくなったら、羊のお母さんに面倒見てもらいなさいと言ってたから」「そんなバカな。私は聞いてないよ」「聞いてなくても私たちはみなしごなんだから面倒見てよ」「ええ、折角子育てが終わってのびのび自由になったと思ったのに」「私たちは小さいから育てやすいよ」「まったく、何処へ行ったんだ」「ここが気持ちいい」