初読みの作家で、表題作以下三篇の作品が収められている。
30年前の作品だが文字が浮き立つほど筆力を強く感じた。
著者は昭和24年生まれの独身だが、どの作品も性体験の豊富さを感じずにはおれない。
例えばこんな文章。
「最初のころは抱かれるたびに的確に彫りを深めていた快感の度合い、そろそろ変わりばえのしない一定線を引きはじめている。なんだか、もうこれ以上は期待できそうもなかった」
過去にこんな文章が書ける女性と付き合っていたら、間違いなく結婚したね。
ともあれ、直木賞の名に相応しい作家だった。