「あっ、僕に頂戴」
「バカヤロー、その魚は俺のだ。獲るんじゃねぇ」
「僕、お腹減ってるんだよ」
「俺だって減ってるさ。だからこうやって釣りに来てるんじゃねえか」
「オジサンはまだまだ獲ればいいじゃないか」
「生意気言うんじゃねえ。俺1人で食ってどうする。家には女房と3人の子供が腹を空かせて待ってるんだ。だから沢山釣らなきゃならねえのさ。一匹たりともお前にやるわけにはいかねんだよ」
「これ一匹だけでいいんだよ。おいらはまだ一人もんだから家族も居ないし」
「だめだだめだ。さあ、とっとと失せな」
「お願いだよ」
「仕方ねえな、お前そんなに空腹なのか。じゃ、これ一匹だけだぞ」
「ありがとう、おじさん」