久しぶりに面白い小説に出会った。
というかいい本だった。
小説と言っても事実を踏まえた上での物語だが。
時は1942年7月16日から17日かけてドイツ占領下のパリ。
知っての通り、降伏文書に署名したフランスは、ペタン元帥を首班とするヴィシー政府と、ドイツ軍直接統治のフランスに分割されてしまう。
その後、ドイツの命令があったのか、フランス警察は、ユダヤ人13,152人の一斉逮捕に踏み切る。
世に言うヴィルディブ事件の始まりだが、この話は、いろんな文献にも登場するので、そのようなことがあったことは知っていたが、まとまった本を読んだことがなかった。
フランスにとっては都合の悪い話で、今もってあまり語りたがらないようだ。
全く酷い話だが屋内競技場に集められ、満足な食事も与えられず、トイレも使えず6日間、競技場に留め置かれた後、家畜用の列車で全員がアウシュヴィッツに送られ、戦後生還できたのは僅か400人程度だった。
フランス警察の責任の下で行われた事件だけに、戦後、その責任が問われた。
物語は、戦後60年経った2002年、40代後半の女性ジャーナリストが上司から、この事件に付いて調査するように言われる。
事実が明らかになっていくうち、旦那の祖父母に関係することが分かってくる。
サラとは10歳の少女のことだが、いったい60年前に何があったのか、まるでサスペンス小説を読むように緊張感を持って読み進めることの出来る本で、早く事実が知りたくなる。
サラの家族と主人の家系は、何がどう繋がっているのか。
歴史的事実を踏まえた上で読めば、別に難しい本ではない。