愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

You`re my Heart You`re my Soul Dance 『女たちへのいたみうた』

画家は女の裸体を描き、詩人は、女を明け透けに解き放つ。
公家はストーカーにもなり、女を囲うことだけに生涯を費し、
志士は女を三条河原に晒し、武人の妻は咽を突く。
 
これ、すなわち芸術也。
芸術の神髄は女の心を裸にすることにあり。
男子の本懐、是にすぐるものなし。
冥利を突き刺して快哉を叫ぶ時こそ芸術の頂き也。
 
まあ、それはともかくも、金子光晴の『女たちへのいたみうた』は素晴らしい。
 
あゝ、けふもゆきずりの女たち、
みしらぬ女たち、ことばもかはさず
まためぐりあふ日もない女たち。
うき雲のやうに彩られて
こころに消えぬ女たち。

その誰と住んでも年月はとび去り
おなじやうに生はからっぽだらう。
放蕩よ。つかひへらした若さは
こぼれた酒とおなじで、ふたたび
このこころを沸かすすべもない。
 
おしろいにまみれた裸虫さん。
まだあったかい牛乳壜さん。
ねどこのうへにこはれたせとものさん。
二十年前の匂やかだった女たちのやうに。
二十年後は、若いあなたも老いてゐるか。

私は、かなしげに眼をつむる。蒼穹のふかみ
おびただしい石の円柱が倒れる。
退場するもののすさまじい鳴響。
さかさまにながれる『時』の血流のなかで、私は叫ぶ。
「一千万人の女たちよ。さやうなら」
 
それにしてもしなやかな肢体、ロングヘアー、セクシーなダンス、全く惚れ惚れします。