愛に恋

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嗚呼、懐かしの東京


明治時代の東京 vol.1(手彩色絵葉書) Old Postcards of Japan:Tokyo

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行く水に 落葉浮かべ
さやかなり 月の光
遥けきは 遠きかの日
流れきて 流れ去りぬ
 
人の世は さながらに 
流れゆく 川水か
月日かげ 映しつつ
果てなく 絶えず
 
これは「ドナウ川の漣」の歌詞で、もともと歌などないが、戦前の女学校などでは藤浦洸によって訳詩されたものが、よく歌われていたそうだ。
私の祖父母は明治の20年代の生まれで、越前の国、福井藩領で名主として代々、陣屋を営んでいたが、これらの写真が凡そ、明治後期辺りのものだとすると、父はまだ生まれてないにしても、当時のこと、大正の御代になっても、あまり風俗や建物も変わってないかと思われる。
 
かしかし、父が大正初期の東京で、これらの建造物を見たことはなかったろう。
何れにしても先祖以来、戦の絶えなかったこの日本で今日、我が家系が絶えなかったということは、辛くも苦難の歴史を生き抜いてきたわけで、だからこそ私もこうやって生きているわけだ。
然し残念ながらこの後、震災と戦災で江戸の面影は殆んど壊滅してしまった。
後の日本の運命も知らず、束の間の平和を享受していた当時の人たちの生活ぶりは如何なものだったのだろうか?
 
同じ国、同じ民族とは思えぬほどの変貌ぶり。
たった一世紀でこうも変わるものなのか!
それよりは、たった半世紀で江戸からここまで激変した東京をお年寄りはどう思っていたか。
現在という高みに立って過去を見下ろせば、嘘のような生活に見える明治、大正も、過去の先人たちが未来という闇を切り開いて垣間見たら、令和の世は、単なる羨ましさだけで済むだろうか。
繁栄の果てに待つものは、まさか東京砂漠ではあるまいな。