愛に恋

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波多野秋子の遺書

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春房さま
とうとうかなしいおわかれをする時がまゐり
ました。 ○○おはなし申上げた通りで、
秋子の心はよくわかって下さることとぞんじ
ます。 私もあなたの お心がよくわかって
をります。十二年の○ 愛しぬいてくだすつた
ことをうれしくもつたいなくぞんじます。
わがままのありつたけをした
揚句に あなたを殺すやうなことになり
ました。それを思ふと堪りません。

あなたをたつた独りぼつちにしてゆく
のが可哀相で可哀相でたまりません
               秋子

六月九日 午前一時半

(○字判読不能
 
これは、有島武郎と心中した波多野秋子、最後の手紙で春房とは秋子の亭主。
二人が縊死したのは9日午前2時過ぎというから死の直前ということになる。
かなり保存状態も良く道立文学館にあるというが、一度、この目で見てみたいものだ。
 
この年は9月に大震災が起きる年でもあるが、もし一連の事件が3か月ほどずれていたらどうだろうか、それでも二人は死の誘惑を断ち切れなかっただろうか。
私としては、他に道はなかったのかと、今一度立ち止まって思案してもらいたかった。
または頼りになる弟たちもいることだし、敢えて死を選ばずとも必ず生きる道はあったと確信している。