愛に恋

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佐藤春夫 弔辞の川端康成

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かれこれ40年ほど前のこと、芥川龍之介の弔辞を読んだ菊池寛の文章に痛く感動したことがあったが、戦後の一時期、追悼の名人と言われた川端康成の読む弔辞は葬儀に参列した多くの人たちの胸を打ったに違いない。
中でも昭和39年、佐藤春夫を送ったときの弔辞は素晴らしい。
 
悲愁のうちに千峰霽(は)れて露光冷(すず)しきを感ず
心奥を貫きて開眼を促す 
時は五月 
詩人の古里にたちばなの花咲くならんか
ほととぎす心あらば来鳴きともせよ
 
格調高い弔辞ですね。
川端康成の死者に向ける視線はこのうえなく優しかったという評が伝わっているが、本当に斯くありたいものだ。
 
佐藤春夫は若さに就いてこのように語っていた。
 
「若さは、夢であり、花であり、詩である。永久の夢といふものはなく、色褪せない花はない。また詩はその形の短いところに一層の力がある。若さも亦、それが滅び、それがうつろひ、それが長くないところに一しほの魅力がある」
 
ところで佐藤春夫の動画というのは全くないのだろうか。
こちらが知らないだけで明治生まれの政治家、軍人、画家、文豪など意外と残っている場合が多いのだが。
 以前、横山大観の映像を見たことがあるが少し驚いた。
最近も後藤新平浜口雄幸鈴木貫太郎の映像などが現存していことを知り、もっといろいろ見たいのだが。