愛に恋

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小津日記 糞

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仮に今の日本に徴兵制があったとしても、この歳になれば召集令状が来ることはまずないが、子供の頃から父親に戦争の話しなど聞かされて育ったため、何かにつけ戦時中の事を考えて本を読むことが多い。
それ以前に体質的に私は軍隊生活には向いていないと思う。
 
戦場に付き物と言えば、長い行軍、ジャングル、密林などでの野営、渡河、そして飢えやマラリア、寒暖の差は元より何処ででも寝て風呂に入ることも出来ない。
篠突く雨の中、泥濘の中を行軍、考えても嫌になる。
始終、下痢に悩まされ私なら戦死ではなく確実に病死だろう。
ビルマインパール作戦なんてとんでもない。
 
そこで今日も小津日記を紐解いてみたい。
戦場では当然、便所などないので誰も彼も野糞が当たり前。
それに付いて観察者、小津は面白いことを書いているので、是非にもここに留めおきたい。
 
昭和14年3月1日
人間の尻の穴は丸いものだとばかり思ってゐた。
だが戦争に来て到るところの野糞を見ると、どうも人間の尻の穴は丸いとばかり限ってはゐない。
ゐないどころか、丸いのははなはだ少ない。
三枚羽根のコンプール・シャッターから絞り出したような三角や四角や種々雑多であるらしい。
その色彩も赤いのや虎斑のや色とりどりでぼう埠では胡瓜を喰ひ過ぎて青い糞に驚いた覚えもある。
戦争と糧秣と衛生と生理と排泄と誰か考現学的にくらべる奴はいないのか。
糞尿譚の作家、火野葦平にして「糞と兵隊」というのはどうか。
 
まさに糞づくしで小津は異常な関心をそこに示している。
とにかく彼は糞に生涯こだわった人だったらしい。
しかし面白い、戦火の中、人間の糞について考察している小津の好奇心、または観察力。
私も結構、ウンコの話しが好きだが、一度、小津監督とウンコ談義がしたかった。