愛に恋

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下山事件 最期の証言 柴田哲孝

 
さして能力のない私は時に買う本を侮ってしまうことがある。
何も珍しいことではなく、昔からよくあることで驚きもしないが、本書もその類で些か疲れた。
特務機関、亜細亜産業、キャノン機関、横浜、密貿易と、戦後、父が関連した事柄の多いことから興味を持って読み進んでみたが、登場人物の多さ、無数の組織と、ちょっと策士策に溺れるではないのか。
 
戦後史を少し知っているぐらいでは、到底紐解けない歴史で、下山事件は殺人という観点から書いているが、私も自殺や事故死ではないと思っているが、真実はアメリ国立公文書館からよほどの資料でも出てこない限り、永久に迷宮入りではなかろうか。
 
確かに謎は追求したい。
しかしこれはあまりにも込み入った問題だ。
解説で櫻井よしこさんがこう言っている。
 
「米国は当初、日本の伝統的、歴史的価値観を否定し、旧体制を悉く打破する目的で、共産主義勢力を容認した。しかし、その後、コミュンテルンの脅威の、予想を超えた拡大を前にして対決姿勢を強めていく。米国の対日政策も容共から反共へと方針転換され、日本は「反共の砦」と位置づけられる。
対日政策は左から右へと烈しい軋みを伴って転換されたが、それは日本国内における左右両勢力の熾烈な対立をも生み出していった。その暗く重い軋みのなかで発生した事件のひとつが下山事件だった」
 
いつの日か解明されることがあるのだろうか。
因みに本書はノンフィクションだが、日本冒険小説協会大賞日本推理作家協会賞を受賞している。
 
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