愛に恋

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加納大尉夫人 佐藤愛子

 
本書の文庫化は昭和55年12月と古いもので著者が一番気に入ってる作品に挙げているとあったので古書店で見つけた折に買ってしまった。
 
ストーリーとしては難しいものではなく、見栄え麗しくない主人公の安代は、親の持ってくる縁談を悉く撥ね付け、一生独身で過ごそうと思っていたが、ある日、将来を嘱望された海軍士官の加納大尉を気に入り結婚。
眉目秀麗、肉体頑強にして頭脳明晰な加納は女学生憧れの的のような男性で、それを加代が射止めたことで周囲はビックリ。
 
しかし安代は武人の妻としての鍛錬が足りず、夫からそれとなく注意を受けるが自分に何が足りないか分からない。
安代はただ夫の傍にいるだけで幸福感を味わい、このままの生活が続くことを願うが、時は太平洋戦争真っただ中で夫は潜水艦乗りとして出撃。
この時代、男の子が生まれると夫の身代わりといわれ即ち死を意味していたらしいが生まれて来た子は男児、その子の顔を見ることなく戦死広報が届く。
 
この時代、靖国の母、戦争未亡人、戦災孤児など統計を取っていないだろうが、いったいどのぐらいの数になったのか。
愛子さんの世代では、身近にその手の話は嫌というほど聞いたのだろうに。
なにしろ310万の犠牲というわけだから途方もない数だ。
ところで愛子さんの作品では偶に猥雑な話が出てくるが、その辺は好んで書いているのだろうか少し知りたい。
 
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