発売後、半世紀以上の月日が経過しているが、瀬戸内さんが今も健在なのは大変喜ばしい。
しかし寂聴と改名されてからの本はあまり読んでいない。
もっぱら晴美時代の伝記小説を数冊読ませて頂いたが、何れも力作揃いでお薦め作品ばかり。
田村俊子の作品は1冊も読んでいないが瀬戸内さんが書いた彼女の伝記本は以前から読みたいと思っていた。
自由で奔放でむせかえるような官能的筆致らしいので興味をそそる。
俊子は「芸術は学問からは生まれないのよ」と言っているがなるほど、そうかも知れない。
「天分が第一よ」とも言う俊子は夫婦喧嘩の最も安易な解決方法は肉体を許すことだと。
成程、確かに!
この時代の女流作家にはやはり私小説が多いのだろうか?
その点、俊子は申し分なさそうな経歴で旦那との取っ組み合いの喧嘩は有名だったらしい。
巷間伝えられる色情狂的で愛欲一途な女かどうか、読了しても判断し兼ねるが芸術家はそのぐらいの風聞があった方が出色だ。
化粧が濃く、色白で派手なタイプで数多くの浮名を流したことは本当のようだ。
好きになったら骨までもではないが、惚れた相手には一日も欠かさず手紙を書き続ける少女的な魅力を持った人で、いくつになっても恋なしでは生きられない。
過去の個性的な女性芸術家の本を読んでいていつも思うが、
「もし、自分が恋人なら相手が務まるか?」
と、つまらぬ妄想をしてしまう、果たして気性の激しい田村俊子を扱いきれるかどうか・・・
いずれにしても初婚相手との生活が終わると共に俊子の作家的な寿命も蝋燭の灯のような儚さを見せ、その原因を瀬戸内さんは
「芸術には悪魔の参加も必要なことに気づいていなかったようだ」
と言っている。
そして俊子を評して、
生まれながらに芸術家特有の、あふれるような感受性や、奔放不羈な情熱や、桁外れの天衣無縫さや、人並み外れて貪婪なあらゆる欲望や放埓と紙一重の耽美趣味や、官能享楽への嗜好を存分に持っていた
う~ん、確かにこんな女性なら一度お目にかかりたいものだ。
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