パイド・パイパーと言えば民間伝承の『ハメルンの笛吹き男』を思い出される人も多いだろうが、この小説はそんなメルヘンチックなものではない。
欧州大戦の最中、イギリス空軍士官だった息子の死を機に憔悴の旅へと向かう70歳のハワード。
釣竿1本持ってフランスへ。
しかし、ドイツ軍の進撃は早く、瞬く間にポーランドの西半分を制圧、翌40年4月、デンマーク侵攻を皮切りにノルウェー、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグと占領、5月にはフランスが誇るマジノ線を突破、連合軍は英仏海峡に追い詰められ、遂にダンケルクから英本土へ撤退。
それを知ったハワードはイギリスへ戻ることを決断。
友人の子供を2人預かり行く先々で子供の数が次第に増えていくという物語だ。
メイドの姪、機銃掃射で両親を亡くした子供、オランダ人、ポーランド系ユダヤ人の子供など7人を連れて無事、イギリス本土まで辿り着けるかという話しだが、途中、ゲシュタポに捕まり尋問される場面などは緊迫感がある。
気の弱い私はゲシュタポに逮捕されるぐらいなら自殺した方がマシと考えてしまう。
今回の外国文学は翻訳もよく筋書も明瞭で違和感や矛盾点なく読めた。
英国紳士としてあまりにも真面目な性格が仇となりゲシュタポの拷問に遭うのかとヒヤヒヤしたが、まあ、一安心。
全体的に好感度ある小説だが、驚くのは、この本が書かれたのが大戦中の1942年。
かなりリアリティがあるのはそのためか。
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