愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

金山康喜

宮城まり子の本を読んでいる。
まだ、読了していないが気になったことがあるので書くことにした。
ある日のこと、出演中の日比谷芸術座から徒歩5分くらいの所にある画廊のウィンドウで見た絵の事が書かれている。
誰の個展かと確かめてみると金山康喜とある、知らない人なのでその日は立ち去ったが、翌日もその翌日も画廊に足が向き、最終日、恐る恐る画廊に入って訊いてみた。
 
「あの絵は?」
「金山さんですか? 今日で終わりましたので、片付けております。アトリエをお教えしますので、聞いてみてください」
 
しかし、アトリエまで訪ねるのも恥ずかしいので、そのままになったが絵だけは忘れることが出来なかった。
暫くして金山康喜本人からハガキが届き、画廊に何度も来てくれたと聞いたので劇場に行きましたと書かれていたが入院しているという文面だった。
その二、三日あとに谷内六郎から電話があり、
 
「金山さんが亡くなられたので今から通夜、すぐ来て下さい」
 
逢ったことのもない方の通夜にと思ったけれど、金山さんは恋がかなわず、病院に入り、退院して来て睡眠薬(?)で自殺したのではないかという話しを聞き、あの紫色の葡萄酒の色は、悲しい恋の色だったのかと、同じ恋する身には哀しくて、私は出かけて行った。
 
とある。
通夜の席上には團伊玖磨野間宏谷内六郎の姿も。
後日、金山の親戚から電話があり、思い切って絵を購入したと書いてあるが、はて、そこで私も調べてみた。
金山康喜は1926年4月26日生まれで59年6月16日に没しているが、何処をどう引っ繰り返しても金山が自殺したという記述が見当たらない。
ただ、あっけなく死んだというばかりで死因が分からない。
なら、金山康喜の伝記本はないかと探してみるが書かれた様子がない。
 
一体どうしたことか?
これでは消化不良ではないか。
33歳なら夭折の画家ということになる。
では、宮城まり子が買った絵は現在どうなっているのか。
手掛かりは「あの紫色の葡萄酒の色」
或はこの手の絵か?

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《食前の祈り》(1950年)
 何か頼りなさそうで不思議な絵、薄命の哀しさか宮城まり子が惹かれるのも無理からぬこと。
因みに彼女は今月91歳になる。