『ないもの、あります』とはどういう事なのかと購入前には思っていたのだが。
つまり、『ないもの』を売っている店ということになるわけで。
店名はクラフト・エヴィング商会。
著者もクラフト・エヴィング商会となっている。
では、一体、どんな物が売っているのかというと、これまた抱腹絶倒の商品ばかり。
さて、その商品名をずらりと並べてみると・・・!
「堪忍袋の緒」
「舌鼓」
「左うちわ」
「相槌」
「口車」
「先輩風」
「地獄耳」
「一本槍」
「自分を上げる棚」
「千本針」
「思う壺」
「捕らぬタヌキの皮ジャンバー」
「語り草」
「鬼に金棒」
「助け舟」
「無鉄砲」
「転ばぬ先の杖」
「金字塔」
「目から落ちたうろこ」
「おかんむり」
「一筋縄」
「冥途の土産」
「腹時計」
「他人のふんどし」
「大風呂敷」
つまり、これら一般では手に入らぬ商品をクラフト・エヴィングなる商会が新しい看板を立ち上げ販売しているというわけだ。
ただし、いつ行っても品物があるとは限らず、場合によっては取り寄せもある。
更に、あんなもの、こんなもは置いてありませんかという問い合わせも多数あり、まずは商売繁盛。
さらには使用上の注意から効能まで親切丁寧明朗会計。
例えば「堪忍袋の緒」については以下のように書かれている。
「えいっ!」と思いっきりよく切ってしまって、人生を棒にふることもあるので注意が必要」などという説明書き。
因みにこれは下町町人の手作り。
一番の人気商品がこれ。
「左うちわ」
これさえあれば他になにも要らない商品。
朝寝、朝酒、朝湯も大結構。
毎日が竜宮城状態。
そして、悪党の皆様の為の限定商品として「口車」がある。
特に口達者の悪者にはお薦め商品。
舌先三寸で転がすように作られている一品。
「思う壺」も売っているようだが、これがなかなか手に入らない。
いつも先方にばかりある商品だからだ。
即ち、「相手の思う壺」「敵の思う壺」「向うの思う壺」、つまり、「自分の思う壺」なる商品は自分には回って来ないものだとか。
そして迅速をモットーとする店として一番の商品は「捕らぬタヌキの皮ジャンバー』
「ほしい」と思ったら直ぐ「はい、どうぞ」と出てくる品物。
さらに代金はただ。
何しろ、タヌキをまだ捕まえていないし、この世に存在するかどうか判らぬタヌキ。
「語り草」ついての注意書きには、育て過ぎると「お笑い草」になってしまうので気を付けるようにとある。
ところで「猫に小判」「豚に真珠」の商品は常時在庫が豊富だが「鬼に金棒」は最近在庫切れ状態。
何故か、近年、「鬼」の存在がめっきり減ったためだとある。
そして「冥途の土産」だが、その土産の塩梅が難しいらしい。
「できちゃったよ」ぐらいが程よい商品。
「ひひひひ、出来たぞ、できた」では大した土産にはならない。
「お前さん。これで冥途の土産が出来たっていうもんだね」
この一言があれば最高級品!
最後の一品、それが「大風呂敷」
どんな大きなものでも包み込んでしまうが、まるで何も無かったように、さっとたたんで消え去ること。
ここが肝要。
近年、これほど笑った本はない。
文章で人を笑わせるにはよほどの技量と知識とセンスが必要だ。
その全てを兼ね備えているのがクラフト・エヴィング商会。
早速、私も「金字塔」と「左うちわ」を注文した。
これで余生はご安泰間違いなし!
こういう店を待っていたんだよ!
早く届かないかな、取り敢えず私は「ろくろ首」は要らないから。
そんなに長く待っていられない。
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