愛に恋

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胡椒息子 獅子文六

 
ちくま文庫獅子文六の第8弾『胡椒息子』なる本が出たので、まさに
「待ちかねぞ文六」ってな具合で早速読んでみた。
 
ふん・・・!
いつもながら思うのは、文六先生の思惑は将来、映画化されるのを想定して書いているような気がしないでもない。
失礼ながら文学というよりは何か脚本小説とでも言おうか、確かに筋書は面白い。
どのようなエンディングが待っているのか早く知りたくなるような展開仕立てでヤキモキする。
 
しかし、純然たる文学作品じゃないところが致命的で今日までの数十年没落の憂き目に遭ったのではないかと勘繰るがどうだろう。
文藝作品として映画化するというよりはテレビドラマとして制作した方が安定感があると言っては言い過ぎか!
いや、決して面白くないと言っているのではない。
ただ、今回のタイトルは何かこじつけ感が強く感じられた。
だが、近年、筑摩書房が復刊に踏み切ってくれたことで私もこうやって楽しんでいるわけだし、聞くところによると来月には第9弾、再来月にも第10弾が出る予定らしい。
以前にも書いたが復刊作品は全て読むつもりなので、今後とも筑摩書房には宜しくお願いしたい。
 
ところで、文六作品は一体、何本、映画化されているのか?
この作品も昭和28年に封切られているが書かれたのは昭和12年とかなり古い。
映画好きの私だが文六映画は一本も見たことがない。
一度、全編、BSなどで演ってくれないものだろうか。
さてと、忘れないようにストーリーも書いておく。
 
牟礼家の次男坊当年十二歳の昌二郎はヤンチャの上に、当主昌造と芸者つたとの間に出来た子供ゆえか、恒子夫人や兄と姉の昌太郎、加津美には冷く扱われていたが、婆やのお民から可愛がられていた。薬師寺家の春子と昌太郎との縁談が、昌二郎が原因で破談した事から、この傾向は益々強く、恒子夫人に意見をしたお民は却って暇を出された上に、昌造の留守の間に、昌二郎は感化院に入れられてしまった。感化院の中で知りあったゴンズイの手によって突然お民が脳溢血で倒れたのを知った昌二郎は、暴風雨の夜感化院を脱走、お民を見舞ったので、小康を得た。帰邸した昌造は一切を知り、日頃険悪だった恒子夫人との仲を清算して、昌二郎の生母つたを迎えようと決意、昌二郎とつたを対面させるが、昌二郎はママが本当のお母さんだと言い張って聞かない。つたは自ら諦め、昌二郎のこの態度に、今は愛情の湧いた恒子夫人も非を詫びて、牟礼家は団欒を取り戻した。
 
最後にちくま文庫としては第10弾までは決定し発表もしているので安心だが、その先はどうするつもりなのか判然としない。
第一、文六先生には長編小説が何作あるのかも知らない私としては、この際だから、全ての長編を復刊したらよかろうと思っているのだが。
古書店などで『獅子文六全集』を偶に見るが量的にかなり多い。
 
そうそう、『付録』として文六先生の子供時代にこんな悪戯体験記が載っていたので記しておきたい。
 
・姉が大切にしていた金魚を、沸いた風呂桶で泳がせて死なせてしまった。
・着物を着たまま風呂へ飛び込んだ。
・菓子折りに馬糞を入れて、熨斗をつけて知人に送りつけた。
 
私が人づてに聞いた父の悪戯もひとつ。
祖父が大事にしていた帽子の中に小便をした(笑
 
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