2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧
私は昔から夢というものを持ったことがない。 大言壮語が多く単なる夢想家に過ぎずエジプトへ行ってミイラを発掘するとか、ミッチミラー合唱団に入るなどと嘯いてばかり。 ああなったらいいな、こうなったらいいなと言って人を煙に巻き何ら成し得ていない。 …
太宰関連の本はこれまで何冊も読んでいるが、この本には今まで知らなかったことが書かれていて少し驚いた。 著者の杉森久英という人は近年、テレビドラマでも話題を呼んだ『天皇の料理番』の作者でもあるが伝記文学の名手としても名の知れた作家で既に故人と…
先ごろ発売された岩波の恒例春のリクエスト復刊! 今回は37点40冊。 https://www.iwanami.co.jp/news/n23560.html 読書家の中には岩波文庫全読破を目指す恐ろしい輩もいるが、一時期、私も岩波ばかりを読んでいた頃があったが全巻読破なんてとんでもない。 …
藤沢周平という作家はかなり多くの作品を残したが私が読んだ本はたったの二冊。 『回天の門』と『雲奔る 小説・雲井龍雄』だけで他に『蝉しぐれ』という映画を一本観ている。 『回天の門』は幕末の志士、清河八郎を描いた作品だが清河と藤沢さんは郷里が同じ…
獅子文六の作、ちくま文庫の第4弾がこの作品。 『七時間半』とは昭和35年当時、東京ー大阪間を七時間半で結ぶ豪華特急「ちどり」のことで物語は車内で起こる従業員や客とのラブコメディの顛末を道中七時間半をかけて作者が語っているような展開だが、解説に…
犀星が亡くなったのは昭和37年の今日。 56年前ということか。 私はこの年の2月だったか3月だったか家庭の事情で東京から名古屋に越して来た頃で、時を同じくして犀星は72年の生涯に幕を閉じたわけだ。 朔太郎死して20年、どんな気持ちで生きていたのか。 そ…
曲は現在のJポップ・アーティストのように作詞、作曲、歌唱と、例えば桑田佳祐や中島みゆきに代表される三位一体、全てを自分でこなすやり方と昭和歌謡のように分業制度とどちらが大変なのだろうか? 難しい問題だが、ともあれ我が国初の映画主題歌は昭和4年…
そうか、言われてみれば現在の天皇誕生日と東條大将以下七名の処刑日は同じ日なわけか。 他にGHQは新憲法施行日を昭和22年5月3日にしているが、それは一年前の東京裁判開廷日と同日。 A級戦犯28人を起訴した4月29日は天皇誕生日。 つまりアメリカ側の狙いは…
徹夜の仕事を終えて 外へおれが散歩に出ると ほのぐらい街を 少年がひとり走っていた ひとりで新聞を配達しているのだ おれが少年だった頃から 新聞は少年が配達していた 昔のあの少年は今 なにを配達しているのだろう ほのぐらいこの世間で なにかをおれも…
僭越ながら我が家系の事に付いて少し触れたい。 先祖は江戸期を通じ、代々の陣屋で参勤交代の折りなど御殿様に宿泊して戴く福井藩の名主だったが、何を思ったか我が祖父母は大正初期、生まれ故郷を捨て大陸に渡って行った。 満州事変はまだ先の話しで落ち着…
文字通り『ビートルズを聴こう - 公式録音全213曲完全ガイド』なので、全楽曲についてこと細かに里中哲彦、遠山修司両氏による対談形式で書かれているのだが、どうもビートルズに関する書物は、読み手の私にとってはそう単純に鑑賞だけに浸れないものがある…
彼の名前は、ヴァンサン・ヴァン・ゴーグ。 彼は急いで店に這入る。 店では土人の矢だとか古風な鐵屑だとか安物の油繪だとかを賣ってゐる。 お氣毒な藝術家よ、君は今賣りに來たその繪を描いた時、君の魂の一と切れを入れたのだ。 薔薇色の紙の上の薔薇色の…
昭和45年といえば三島の自決と大阪万博の年だったがサミー・ディビス・ジュニア、セルジオ・メンデス、フィフス・ディメイション、マレーネ・ディートリッヒのライブ・ステーが万博ホールで行われていたなんて今回初めて知った。 はて、私が行ったのはいつだ…
鏑木清方の随筆『明治の東京』という本を読むと、さすがに明治生まれの人、漢学の素養もあってか名文が多い。 半世紀ともなると難福交々(こもごも)、一見何の奇もなく無為に過ぎたようでも、越えて来た山河は険しい、祖母は神信心の篤い人だったので、一家…
著者は既に故人となっているが、どういうわけか近年、この原作を元にしたテレビドラマが放映された。 杉森久英は伝記文学を得意とする人で私も過去、何作か読んでいるが『天皇の料理番』はたまに古本屋で見かける程度の絶版本で、先日、復刻版が出ているのを…
本題に入る前に著者に付いて少し触れたい。 膨大な参考文献一覧を見て、一体、何者なのかと略歴を読むと、何と昭和58年生まれの女性で東大文学部卒、同大学院人文社会系研究科博士課程修了とある。 私とは親子ほど年齢が離れているが、こんな子が我が娘なら…
直木賞に名を残しながらも、これほど読まれなくなった作家も珍しい。 現在ではまず、その作品を探し出すことから始めなければならず、彼の小説に巡り合うことは殆どない。 本書は直木の甥、つまり弟の息子によって書かれた初の本格的評伝。 その昔、私は直木…
作者は28歳のオーストラリア人女性、史実を基にアイスランド史上最後の死刑囚の実話らしい。 アイスランド小説なるものを初めて読んだが、日本人にはあまり馴染みのない国で、地名や人名など実に読み辛い。 例えば処刑された2人の囚人はフリドリンク・ジグル…
広重の第61景 「浅草川首尾の松御厩河岸」(安政三年八月 夏の部) 船で吉原へ向う遊客がこの松を見て今宵の首尾を語り合ったのが由来らしいが、はて? 「船で吉原へ向う遊客」 つまり、今から吉原へ向かう訳だ。 最近では「首尾は上々」などという言葉もあ…
確か植木等さんも住職の息子さんだと何かで読んだが、笠智衆さんは明治37年5月13日、肥後生まれのお寺の次男坊。 まさに日露戦争の最中ではないか。 その後、父親が61歳で他界と書いてあるので実父は江戸時代の生まれか。 私たちがよく知る笠智衆さんの父が…
ゲイリー・オールドマンのこの変貌ぶりが信じられない。 第90回アカデミー賞でチャーチルを演じ主演男優賞を受賞に輝いた。 そのメイクアップを担当しオスカーを受章したのが我らが辻一弘氏。 何でもオールドマンは「君がやらないなら出ない」と言ったとか。…
今の時代、まるで魔女狩りのように芸能人の不倫を暴き公開裁判よろしく昼の情報番組などで週刊誌ネタを元に同じ芸能人が被告を吊るし上げているが、不倫の是非はともかく一般社会ではおそらく5万という人が不倫を経験していると思う。 瀬戸内寂聴は「だって…
1937年といえば風雲急を告げるヨーロッパで、翌年3月にはドイツがチェコを併合。 そんな中、ヒトラーを表敬訪問したのが先のイギリス国王ウィンザー公夫妻だが、公の真意はどこにあったのかよく解らぬ。 ひどくご満悦のヒトラーを現在も映像で見ることができ…
文学作品で猫と言えばまず漱石、他に内田百間の『ノラや』萩原朔太郎の『猫町』なども有名だが、その漱石の『吾輩は猫である』の一説に以下のようなくだりがある。 「やがて下女が第二の絵葉書を持って来た。見ると活版で舶来の猫が四、五疋ずらりと行列して…
宮城まり子の本を読んでいる。 まだ、読了していないが気になったことがあるので書くことにした。 ある日のこと、出演中の日比谷芸術座から徒歩5分くらいの所にある画廊のウィンドウで見た絵の事が書かれている。 誰の個展かと確かめてみると金山康喜とある…
本書はリットン報告書ではなく飽く迄も調査団のメンバーだったハインリッヒ・シュネーによる『満州国見聞記』で、正確に言えば満州、日本、中国、朝鮮、シベリア鉄道見聞記と言った方が適切かも知れない。 だが、肝心の『リットン報告書』を読んでないので調…
その時代を体験しないものが読書によって歴史を理解しようとする。 それがいかに難しいことか体感させるような本だった。 今ではその名を知る人もあまり居なくなったかも知れぬが昭和の初期にはこのように言われた人だった。 「陸軍の至宝」「永田の前に永田…
第149回直木賞受賞作。 タイトルから想像するに『ホテルローヤル』に来る客のそれぞれが抱える胸の裡をドラマ仕立てで紡ぐ連作短編集ようなものかと思っていたが少し違った。 ホテルローヤルで起こる七つの物語だが時系列的に過去に遡るように展開されてい…
画家、伊藤晴雨なる人物を知ったのは、ほんのここ2~3年前のことで、それも思わぬところからその名を得た。 竹久夢二の愛人、お葉の経歴から伊藤晴雨にたどり着き意外だったのはお葉の過去。 本名は佐々木カ子ヨ(カネヨ)。 藤島武二、伊藤晴雨、竹久夢二の…