愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-09-01から1ヶ月間の記事一覧

蜜蜂・余生 中勘助

年間を通して、中勘助の『銀の匙』だけで国語の授業を行うという、一風変わった中学教諭の話しを聞いたことがある。 教科書を使わず『銀の匙』一冊あれば、こと足りると先生はテレビで言っていたが、そんなことが可能なんだろうか、私には解らない。 今や中…

ルイズ―父に貰いし名は 松下竜一

一代の風雲児といわれた大杉栄と伊藤野枝が殺害されて90年余。 大杉38歳、野枝は28歳という短い生涯だった。 現在、二人の名がどれほど認知されているか知らないが、私が彼らの名に初めて出会ったのは、おそらく昭和47年頃ではないかと記憶する。 その後、一…

城中焼亡埋骨墳

城中焼亡埋骨墳 「じょうちゅう、しょうぼう、まいこつふん」と書いてある。 この辺りは旧大阪城内になるのか。 慶応四年の一月、旧幕府軍の本拠地だった大阪城が新政府軍に引き渡されるに際し、これを潔よしとしない幕臣たちは、城内に火を放ちここで自害し…

慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件 加藤康男

私が解釈するところの「慟哭」とは最大限の哀しみと涙という意味になる。 無分別に涙の洪水に哀しみと共に押し流されていく一片の木の葉のようなものだ。 これから書くことは現代史の闇に葬られた、まぎれもなく慟哭の叫びで、読んで哀し、聞いて身震い、見…

青春怪談 獅子文六

獅子文六、第7弾! その名も『青春怪談』、相変わらずのドタバタコメディで、あまりパッとしないタイトルだが、まずは目出度い。 これでちくま文庫の復刻版は阿川弘之2冊、源氏鶏太2冊、そして獅子文六が7冊。 どうもこの3人の戦後小説は似たり寄ったりのラ…