愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

檀 沢木耕太郎

昭和51年『火宅の人』がベストセラーになっていた頃の事をよく記憶している。 しかし、この小説が出るまで檀一雄という作家のことは知らなかったと思う。 私はまだ若く、明治生まれの作家が次々に世を去る瞬間を無為に過ごしていた。 『火宅の人』は完成まで…

ノモンハン秘史 新書版 辻政信

昭和陸軍に無数に存在したはずの将校団で、今日、その名を世に知らしめている軍人は意外と少ない。 東條大将を除けば、石原高級参謀と辻参謀の名は戦史に刻まれ永久に語られる人物として名高いものがあろう。 今回読んだ本の著者は、関東軍時代の辻政信が少…

阪神 夏の古書ノ市

今年も行って来ました、梅田の『阪神 夏の古書ノ市』へ。 毎度のことながら腰痛を抱え会場をくまなく見るのはやや辛いが、これも趣味の一環ゆえ、致し方ない。 素早く、短時間で読みたい本を探し出し、そそくさと帰ってきました。 あまり積読本を溜めたくな…

ケス 鷹と少年 バリー・ハインズ

時に外国文学というのは、いくら絶賛されていても、どうした訳か私には何ら響かないことが多々ある。 偏に、読み手の私の技量不足と諦めているのだが、今回の本、1968年に出版されるとたちまちベストセラーになり、翌年に映画化され、これまた大評判になった…

九月が永遠に続けば 沼田まほかる

本書はデビュー作にして第五回ホラーサスペンス大賞受賞作で著者56歳の作品。 解説者はこのように書いている。 無論、どの賞も建前としては作者の年齢などは考慮しないことになっているけれども、現実には作者の年齢、筆歴などは多少評価に関係してくるもの…

火花 又吉直樹

研ぎ澄まされた感性というのは高価な濾過器みたいなものだろう。 飲むに値する清涼飲料水を常に提供するだけの装置を兼ね備えているわけだが、これが芸術家の濾過機となると、清濁併せ呑ませる奇怪な濾過機を必要とするから一般販売はしていない。 才能が濾…

死の棘 島尾敏雄

それもこれも、梯久美子が去年出版した大著『狂うひと ─「死の棘」の妻・島尾ミホ』を読むというミッションに駆られたことに他ならない。 『妻への祈り - 島尾敏雄作品集』『海辺の生と死』と読んで、 今回が第三段『死の棘』ということになる。 しかしまだ…

ハマクラの音楽いろいろ 浜口庫之助

私の場合、物心付いて最も古い記憶のヒット曲と言えば守屋 浩の『僕は泣いちっち』だろうか。 ちょうど、『ダッコちゃん』『フラフープ』が爆発的人気を誇っていた第1次池田内閣時代のことで、当然のことながらテレビに出ている人だけが有名人で作曲者のこと…

「南京事件」を調査せよ 清水潔

好むと好まざるとに関わらず、結局、盧溝橋の一発が民族的対決を誘発してしまい、後世、おそらく永久に結論の出ない不毛の論争を招く結果になってしまった。 お隣の中国では「あった」と一貫していることが、我が国では結論が定まらないまま左右両陣営がいが…

末の末っ子

昭和ファミリー小説の決定版とあるが確かに面白い。 まず、タイトルがいい! 『末の末っ子』、つまり予定外の妊娠出産だったというわけだ。 阿川弘之氏には三男一女の子があり、その三男誕生が51歳の時とある。 まるで孫のような年齢差の子供が産まれ、周囲…

ゲーテさん こんばんは 池内紀

文豪ゲーテなんて知らないもんね~! ショーペンハウアー、カント、パスカル、シラー、ハイネ、な~んにも解りません。 だから、私も訪ねてみたくなった。 「ゲーテさん こんばんは」 そして、話しを訊いてみた。 だが、やっぱり解らなかった。 ただ、天才は…

サザンオールスターズ 1978-1985 スージー鈴木

世に音楽評論を生業にしている人がどれだけ存在するか知らぬが、ひとりのアーティストにスポットを当て、生涯に残した全作品の解説レビューを書くなどという離れ業をやってのけた人といえば、少なくとも私個人としては先年、お亡くなりになった中山康樹さん…