愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

辻潤の愛 小島キヨの生涯 倉橋健一

大正時代、新宿で中村屋というパン屋を営んでいたといえば相馬黒光夫妻のことだが、その相馬夫婦に支援を受けていた夭折の天才画家が中村彝(つね)である。 中村の代表作は盲目のロシア人を描いた『エロシェンコ像』だが、彼もまた相馬夫婦の支援を受けてい…

もっと知りたい ミュシャの世界

私にとって好奇心の対象となる人物、それは、何を残したかというよりは、どう生きたかという方に重点が置かれる。 そういう意味では大芸術家ゲーテも乞食行脚の辻潤も同列と考えている。 で、今回の対象者はアルフォンソ・ミュシャだが、この一見、男だか女…

上海 横光利一

織田 作之助 昭和22年1月10日 横光 利一 昭和22年12月30日 菊池 寛 昭和23年3月6日 太宰 治 昭和23年6月13日 この時期、文壇はたった1年半年足らずの間に4人もの流行作家を亡くしている。 しかし今日、織田作、菊池 寛、太宰 治の再燃はあっても横光利一ブー…

梨本宮伊都子妃の日記―皇族妃の見た明治・大正・昭和

久々に大阪天満にある天牛書店に足を運んでみた。 流石に大阪随一の古書店だけあっていつ行っても客は多い。 私が見るコーナーは毎度決まっていて文庫本全般、歴史、戦記、伝記、評伝、美術、映画、文壇史や日記といった類。 追い遣るように背表紙を見ていく…

アルフレッド・ドレフュス「獄中日記」

南米仏領ギニア・デヴィルズ島と聞いてピンときた! 映画『パピヨン』の舞台となった悪名高いあの島だ。 73年、スティーブ・マックイーン主演映画のラストシーンが蘇る。 ナポレオン3世の第二帝政期、政治犯を収容した悪魔島で、終身禁固刑のドレフュス大尉…

滝田樗陰 - 『中央公論』名編集者の生涯 杉森久英

長い間の懸案がやっと解決したような気分だ。 あくまでも仮定の話しだが、もし私に文才あらば日本文壇史なるものを書きたいと永年、夢想して来たが、さて、肝心の主役は誰に据えるのか、一向に定まらぬまま月日だけを空費させて今日に至った。 暗中模索の数…

慟哭の海 - 戦艦大和死闘の記録 能村次郎

以前、NHKの『その時歴史が動いた』で戦艦大和を扱った番組があったが、ゲストの半藤一利さんが、大和沈没の場面を見て。 「悲しくなりますね」 と言っていたのが印象深い。 本当に悲しくなる。 吉田満さんの名著『戦艦大和ノ最期』に有名な場面、兵学校出の…

君の膵臓をたべたい 住野よる

テレビ欄や本の帯などで最近よく目にする「必ず」というフレーズ。 曰く。 「必ず泣ける本」 「必ず泣ける映画」 「必ず泣ける曲」 そう聞いただけで引いてしまうのは年齢の所為なのか性格なのか。 私は、この歳になるまで小説で泣いたことは3回しかない。 …

同日同刻―太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 山田風太郎

あの日、あの時、何が起きたのか、各人各様の立場から記録に残った断片を繋ぎ止めて行く作業を地道に続けた結果が、この本ということだろうか。 少なくとも、この手の本を編むということは日本人としてどうしても知りたい事柄が私と一致しているとも言える。…

戦国武将の健康カルテ 渡辺敏樹

戦国時代の武将の死というと戦死、暗殺、毒殺、自害、討ち死になんていうイメージが強いように思うが、やはり圧倒的に多いのは病死でこの本読むとよく分かる。 当然のことながら乱世に生きる武将の生涯はストレスとの戦で、それは現代人とはまた異なる過重な…

不屈の横綱 小説 千代の富士 大下英治

あれは、いつの事だったか? 30歳を少し出た頃だと記憶するが、その日、名古屋栄町のとあるホテルのラウンジでコーヒーをひとり飲んでいた。入店した時には気付かなかったが隣の席に大鵬親方が座っているのを見て驚いた。お連れさんが二人、おそらく奥さんと…

ヒトラーの裁判官フライスラー ヘルムート・オルトナー

大体からして私にナチズムの法理論などが解るはずがない。 では、何故読むのか! そこに山を見つけたからである、などと言えばカッコいいが、それほど能力もない登山家だが欲だけは一丁前だから困る。 しかし、どんな山を登るにも体力は必要。 更に独学素人…

九十歳。何がめでたい 佐藤愛子

もし、自分で母親を選ぶことが出来るとするならば佐藤愛子と答えるかも知れない。 私の父は大正5年生まれなので12年生まれの愛子さんとは釣り合いも取れる。 夫婦であってもおかしくない年齢差だ。 だが、実際の母子となれば喧嘩ばかりしてただろうか。 しか…

鉄の首枷 - 小西行長伝 遠藤周作

一般的に過去を題材にした作品を書く人は歴史小説作家と時代小説作家に区分されると思っていたが解説者によると史伝作家と呼ばれる分野もあるらしい。 初めて聞いた! 徳富蘇峰、山路愛山、森鴎外、海音寺潮五郎、大岡昇平、吉村昭らが該当される作家だとい…

危機の外相 東郷茂徳 阿部牧郎

書棚を見ている。 外務大臣経験者の本を過去、何冊読んだか? 陸奥宗光 大隈重信 加藤高明 小村寿太郎 幣原喜重郎 犬養毅 斎藤実 広田弘毅 野村吉三郎 松岡洋右 東郷茂徳 重光葵。 他に首相が一時、兼任している場合もあるので。 伊藤博文 西園寺公望 山本権…

わが町・青春の逆説 織田作之助

大雑把に言うなれば新潮文庫と岩波文庫の違いはこうなるか! 新潮は自然淘汰文庫、岩波は復刊復刻文庫。 平たく言えば新潮は読まれなくなった本は容赦なく切り捨てられ岩波は切り捨てられた近代文学の復興に努めている。 そういう意味では確かに岩波の価値は…

どこかでベートーヴェン  中山七里 

中山七里だろうが箱根七里だろうが拙者のあまり預かり知らぬ作家なのだが、これまでに2冊の関連本を読んでいる。 ピアニストの岬洋介が難事件を解決する『さよならドビュッシー』と『いつまでもショパン』だが、この作家、よほどクラシックの造形が深いのか…

山下清の放浪日記

義務教育時代の九年間、どちらかと言えば落ちこぼれ的な存在だった私に幾ばくかの慰めと安らぎを与えたものは遠足と社会見学だった。 今一つに音楽鑑賞もある。 とにかく時間内に大人しく音楽を聴いているだけでいいのであるからして、これほど楽な授業もな…

本日は、お日柄もよく 原田マハ

昨今、よく聞かれるところの「お涙頂戴」ありきのキャッチコピーは、どうも違和感を覚える。 「涙腺崩壊」「号泣」「涙がとまらない」 まあ、それはいいとして今回の本、最近、よく聞く作家名なので、どんな本を書く人かと一読してみたのだが、『本日は、お…

黒の画家フランシスコ・ゴヤ ジュリア・ブラックバーン

私にとっては少し難しい本だった。 美術史は専門外だがゴヤが生きた時代には一方ならぬ興味がある。 スペインの独立戦争などをどう見ていたのか、ゴヤに付いてはもっと勉強したいという欲求が湧いてきたが果てさて今後どうするか。 ゴヤは47歳以降82歳で死ぬ…

幸せなひとりぼっち フレドリック・バックマン

外国文学を読むにあたって、一番の問題となるのは訳者との相性かと思う。 今回の本、スウェーデン文学らしいが、過去、スウェーデンの小説なんか読んだことがあったかどうか! 日本でも多くの人に読まれ映画化もされているらしいが、どうも私にとっては感動…

ひろしま美術館 大沢寛三郎

私が美術の本を読んでいるからと言って、決して絵画に開眼した訳でもなんでもない。 まあ、簡単に言えば、ただ何となくといったところだ。 結局のところ、それほど他意があるわけでもなし、読み終わっても大抵の感想は「ふん・・・、なるほどね!」と言った…

世界史から「名画の謎」を解く 日本博学倶楽部

私にとって芸術とはシェフと料理の関係のようなものだ。 出された料理が美味ければ美味いほど、その料理人に対して興味が湧いて来る。 一体、どのような修行を積んで来たのか。 生い立ちは、人生は、そして何故死んだのかなど興味は尽きない。 芸術愛好家な…