愛に恋

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共喰い 田中慎弥 第146回芥川賞受賞作

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一つ年上の幼馴染、千種と付き合う十七歳の遠馬は、父と、父の女の琴子と暮らしていた。セックスのときに琴子を殴る父と自分は違うと自らに言い聞かせる遠馬だったが、やがて内から沸きあがる衝動に戸惑いつつも、次第にそれを抑えきれなくなって―。川辺の田舎町を舞台に起こる、逃げ場のない血と性の物語。大きな話題を呼んだ第146回芥川賞受賞作。

 

と解説にあるが、本作は申し分ない力作だと思う。

17歳の遠馬は、セックスの度に暴力を振るう父の血が自分にも流れていることを自覚しつつ育つが、怖れていたその性癖の血が自分にも漲っているのを自覚していく。

昭和63年、閉塞した川辺の町を舞台とした、性と血の入り交じる陰湿で濃厚な物語で、

収録されている「第三紀層の魚」も小学四年生の信道が、童心のさ中、友情、家族、転居、死に対する複雑な心の変転などを描く純文学。

筆者は魚釣りに関してはかなり詳しいようだ。

尚、両作品は甲乙付けがたく、どちらの作品が芥川賞受を獲ってもおかしくないと思う。

因みに田中慎弥とはこんな人。

記者会見を見てどう思うかは人それぞれだが、実力派には違いない。 


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