愛に恋

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ベニスに死す


Death in Venice (Muerte en Venecia)

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滅びの美学なら、私なりに理解しているのだが、ヴィスコンティの追求した退廃の美学というのは、あまり理解できない。
日本人にも、それなりにファンが居ることからして私も何本か観てみたのだが。
この、あまりに芸術的なマーラーの曲が効果的に使われていることには納得するが、しかし、映画の良さは私には解らなかった。
ヴィスコンティの作品は、どれも理解できない。
 
『ベニスに死す』のロケ地となった場所は、日本人には馴染みのないベネチアの南東に浮かぶ、国際都市リゾートのリド島で、作品の舞台となった島のホテルがホテル・デ・バン。
ミラノの大公爵家に生まれ、幼い頃から芸術に深く親しみを抱いて成長したヴィスコンティは、マーラーを思い浮かべながら、美と老いのはざまで苦悩する主人公を創造し、没落する貴族という、自分自身の姿をも投影させながら、この映画を完成させたらしい。

確かに官能的な旋律で、全編を通して流れるマーラーの曲はヴィスコンティの持つ退廃の美学をより一層鮮やかに浮かび上がらせてはいるが、どうも生理的に映像を素直に受け入れられない。
ハリウッド映画は合理性と単純さを追求しているが、ヨーロッパ映画の深層心理の追求となると、かなり頓挫してきたことは否めない。