愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

アウシュビッツの歯科医 ベンジャミン・ジェイコブス

            f:id:pione1:20190825181352j:plain
            

f:id:pione1:20190825181444j:plain

1944年 春

 

歴史というものは、いくら勉強しても実態が伴わない以上、そうか分かったとは言いにくい。

エルアラメイン、レニングラード硫黄島インパールペリリュー島ガダルカナル島、こんなところは読めば読むほど行きたくない。

彼らはどんな気持ちで戦っていたのだろうか。

私なら敵に遭遇する前に、その環境で既に倒れてしまうかも知れない。

ましてや強制収容所送り、家畜用の貨物に乗せられ、行先も告げられず揺れるがままに運命すら任せ、着いた先が地獄のアウシュビッツ

この人類史上悪名高い収容所で降ろされた人たちの、生々しい写真、向こうに見える煙はガス室で殺された人たちを焼却しているためのものだろうか。

それ以外考えられないが。

著者は、歯科医の技量が多少あったため、連行される時、歯の治療用具箱を持っていくよう強く母に勧められ、それが、後々自分たち家族の命を救うことになる体験記で、幸運にも開放まで生き延びたらしいが、とてもじゃないが羊のように追い回され、家畜のように黙々と屠殺されていくなどとは堪えれるものではない。

1食がパンとスープだけで重労働に絶え生き延びるなど到底不可能だ。

こんなことなら早く死にたいと思う者、最後まで諦めずに生きる努力をする者。

 

先にも書いたと同じように、自分の身に置き換えて考えるなど出来ないが、それを学ぶにはやはり読むしかない。

拠ってこれまでいくらかナチ関係の本を読んできたが、読んで読んで読み倒しても、人類史に刻まれた汚点のページをどれだけ捲れたことか。

著者はこんなことを書いている。

 

さまざまな国から来たユダヤ人がいた。フランスのユダヤ人はベルギーのユダヤ人を嫌い、ベルギーのユダヤ人はオランダのユダヤ人を嫌い、オランダのユダヤ人はドイツのユダヤ人を嫌い、ポーランドユダヤ人は全員から嫌われていた。ロシアのユダヤ人は存在すら認めてもらえない。そして、運命を共にするユダヤ人と非ユダヤ人のあいだに協力が生まれることはいっさいなかった。

 

読んでいて決して面白いものではないが、私にとっては避けて通れない関係の本なのだ。 

 

ポチッ!していただければ嬉しいです ☟