愛に恋

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脇役本 増補文庫版 濱田研吾

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人知れずと言っては失礼だが、新聞の死亡欄などに小さい写真で掲載される俳優さんの死亡記事を見ては、「あっ、この人知ってる。よく時代劇で見た人だ」なんていうことがある。
それまで名前さえ存じ上げなかった、まことに不勉強な私であって、知らないのはこちらばなりで、本人は脇役人生を貫き、ここに謹んでご冥福を祈るばかりなのだが、以前から思うに、それらの人たちは戦前、戦中、戦後と如何な人生を歩んで来られたのか非常に興味があった。
 
出来得るならば、生前に残した自叙伝やエッセイなどあれば読みたいと常々思っていた矢先、本書の発売となって嬉しい次第だ。
然し、買ったはいいが長らく積読状態に置いたままで大変失礼致しました、やっと読了。
だが、頁をめくるに、てっきり映画俳優ばかりだと思っていたら豈図らんや、新国劇、新派、歌舞伎など役者と名の付く職業ならなんでもござれと来たから、意外と読むのに時間がかかった。
 
著者はおそらく脇役好きとしては日本一というぐらいの博識で、古書店を巡っては彼らが残したであろう著書を、例え冊子であっても、あらん限り探しに探しまくった。
その労力たるや恐るべし。
それだけではない、脇役の悲哀か、ほんのチョイ役でも出演したという映画なら、必要な限り見る努力を惜しまない、例えどんなに古いものでも、存在する限りは追い求める。
趣味というのは、ここまで徹底してこそ本物ですね。
私も見習いたい。
 
人に歴史ありと雖も、一人ひとりの足跡を調べるのは至難の業だが、本書を読むと面白いエピソードが沢山載っている。
例えば小暮美千代さんは遺言として長男に、
 
「棺の中に電話機を入れてほしい」
 
と言付けたとある。
亡き夫の居場所が分からない時、104に電話して調べるという。
ちょっと悲しい遺言ですね。
 
内田良平のやさぐれ交友録』なんていうのも読んでみたい。
天地茂の親友、茶川一郎の『旦那との思い出』、お目にかかれない本ですね。
男はつらいよ』でよく出て来た旅芸人一座の座長、昔、よく時代劇で見た人だと思っていたが吉田義夫という名前なんですね、初めて知った。
 
行くことはないと思うが、下北沢駅北口から歩いて数分の所に「珈琲専門店 カフェ タス ヴァリエ」という小さな喫茶店があり、そこにスペシャ山村聰の珈琲」というのがあるらしい、どんな味なのか興味はあるが。
 
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