愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

ペルーの異端審問 フェルナンド・イワサキ

                f:id:pione1:20190810082832j:plain

日系ペルー人作家、フェルナンド・イワサキの本邦初訳作品で、中世南米ペルー副王領の首都リマで、異端審問沙汰となった性にまつわる数々の珍事件を、17の短編に再構成した異色の作品集。
異端審問といえば、一般には拷問・迫害・蒙昧主義のイメージが色濃く、芸術性やユーモアと結びつけた作品はほとんど見当たらない。
 
しかし著者は、人間性に対する鋭い洞察とみごとな筆致で、凄惨な歴史を極上の文学作品に精錬、好色な聴罪司祭、悪魔に憑かれた修道女、男色司教に淫らな女性信者たち、本当の話を裁判記録から精選し、軽妙な読み物に仕立て、読者を抱腹絶倒させることに成功している。
 
罪を逃れようと屁理屈を並べる被告人、困惑した異端審問官たちが下す牽強付会の判決、書記が性的要素を隠そうとするあまり、かえってその淫靡さが際立たってしまった調書の文言……読みながら思わず笑いが漏れるとともに、一抹の物悲しさがよぎる。
 
被告の多くは結局重い罰を科され、不遇のうちに人生を終え、果たして彼ら彼女らの罪は?神なのか、それとも人として自然な肉欲を隠さなかったことで俗世の権威と秩序を侵したことなのか。
諧謔に満ちた物語が、いまなお温存されるカトリック社会の欺瞞を鋭く照らしだす。
 
と、解説を掻い摘んで抜粋してみたが、確かに帯には「抱腹絶倒の中世欲情短編集」筒井康隆の巻頭言があるが、私はどこをよんでも抱腹絶倒どころか、「くすっ」とも笑えなかった。
何がそんなに面白いのか、笑いのツボが違うのか、結局は読み終わってもさっぱり分からなかった。
 
そもそも異端審問からして、どうしてカトリックはこのような残虐で無慈悲な行いを宗教の下で出来たのか不思議でしょうがない。
魔女だと白状するまで拷問で痛めつける。
苦痛のあまり誰でも魔女ですと言ってしまうのがオチで「それみろ、やっぱり魔女だった」となる。
これらの行いに誰も異を唱えなかったのだろうか。
本当に人間は宗教の名のもとに無辜の民を多く殺害してきた。
私には笑うどころか、いつもこの手の本にはカトリックに対する不信感が芽生えるが。 
 
ポチッ!していただければ嬉しいです ☟