勇は伯爵家の家系に生まれながら文学好きが高じて新詩社に入社、与謝野鉄幹の『明星』に短歌を発表。
「紅灯緑酒の境における頽唐享楽の歌風」
難しい言葉が出てくるが「頽唐」はたいとうと読みデカタンス、つまり退廃的という意味になるが、平たく言えば、酒と女に溺れた青春時代の滅茶苦茶な歌詠みというようなことになるか。
勇本人もこのように詠っている。
かへりみれば はなやかなりや 半生は 酒と女のなかに送れる
なるほどね、私は女で身を持ち崩したか(笑
ところで吉井勇の作品をちょっと挙げてみたい。
雨降りて祇園の土をむらさきに染むるも春の名残りなるかな
先斗町の遊びの家の灯のうつる水なつかしや君とながむる
啄木と何かを論じたる後のかの寂しさを旅にもとむる
病みあがりなれど茂吉は酒酌みてしばしば舌を吐きにけるかも
白秋とともに泊りし天草の大江の宿は伴天連の宿
文壇、歌壇、華やかなりし頃の話しですね。