愛に恋

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角海老楼の時計台

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樋口一葉の名作たけくらべに、
 
「朝夕の秋風身にしみ渡りて上清が店の蚊遣香(かやりこう)懷爐灰(かいろばい)に座をゆづり、石橋の田村やが粉挽く臼の音さびしく、角海老(かどえび)が時計の響きもそゞろ哀れの音を傳へるやうに成れば、四季絶間なき日暮里の火の光りも彼れが人を燒く烟 ...」
 
という件があるが、蚊遣香とは蚊取り線香、懷爐灰とは今でいうカイロのことだと思うが、その角海老の楼閣がここに写っている。
よく見ると「新吉原角海老楼前の景」とある。
拡大するとこうなるのか。
 

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正確には角海老楼の時計台ということになるが、その角海老楼を含む吉原一帯が明治44年4月9日の大火で全焼、10時間余に亘って燃え続け消失家屋、6,650戸。
写真は明治20年代の角海老楼の時計台で、一葉の逝去は明治29年だから彼女が見た時計台はまさにこれだろう。
それがこうなった・・・!
 

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灰燼に帰し、江戸の名残も夢の如く消え去った。
廓を営んでいた人や遊女たちは当面どうしたのだろうか。