愛に恋

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『源氏物語』原題語訳の焼失

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失いし一万枚の草稿の女となりて来りなげく夜
 
以前、何の記事だったか、かなり長めの文章を打ち込んだはいいが、間違って削除してしまったことがある。
呆然、唖然、もう馬鹿さ加減に呆れて豆腐に頭を突っ込んでやった。
悔しいやら腹が立つやら、いま一度書き直そうと思えばやれないこともないが、もう面倒くさい。
時間の経過を手助けに改めて書き直したが、どうも同じようなものが書けない。
先の文章の方が良かったような気もして更にガックリ。
 
大正12年9月1日、関東の大震災に遭遇した与謝野晶子は、自宅や出版社は無事だったが『源氏物語』の原題語訳、約10000枚が預けていた文化学院と共に焼失してしまった。
そのとき詠んだ歌が冒頭のもの。
 
焼失した原稿が晶子自身になって、夜、現れては晶子を悩ます。
 
10代の初めに『源氏物語』を原文で読破していた晶子は、30代に入って現代語訳に挑戦。
44歳にして原稿10000枚に達したところで震災に遭った。
今とは違い、全て手書きの原稿の焼失は、晶子に底知れぬ絶望感を与えたらしい。
 
再度挑戦するには10年の歳月が必要で、晶子60歳になっていた。
11人の子供に恵まれた家庭内は戦争状態!
晶子は何万の歌を詠んだか忘れたが、その完成に懸ける凄まじい執念。
恐れ入りましたです!