内藤陳さんは残念のことに先年、お亡くなりになったが、以前『作家の書斎』という本に載っていた陳さん書斎、どうですか、これが書斎といえるでしょうか?
何れにしても圧巻、よく底が抜けないものだと関心しました。
陳さんは新宿ゴールデン街に“深夜+1”という日本冒険小説協会公認のバーを経営し、全国の熱心な推理小説マニアを募り、作家が集まる店としても有名だと聞いた私は早速、在り処を調べ電話したものです、そう、まだパソコンなどない時代の話しです。
このバーが事務局になっていると知って会員登録をお願いしようと思ったんですね。
会長はもちろん陳さんで、勇んでというか恐る恐る電話を掛けると先方との間でこんな会話のやりとりになりました。
「はい、〇〇です」
ホステスらしき女性が出て、何やら店名を名乗ったのだが、店内の音楽が喧しくよく聞き取れなかった。
私は、事務局の女性が夜はカウンター・レディも兼ねているのかと思い、こう訊きました。
「日本冒険小説協会の事務所ですか?」
「えっ、日本冒険小説協会!、違いますけど」
電話の向こうでは別のホステスの高笑いが聞こえ、慌てて「すみません」と言って切ったが、電話口から漏れ聞こえてきたホステスの言葉に全く赤っ恥をかいた。
「日本冒険小説協会ですかだって」
「キャアハハ」
私はいったいどこに電話したのだろうか?