愛に恋

    読んだり・見たり・聴いたり!

放浪記 林芙美子

                f:id:pione1:20190316185343j:plain

確か映画や舞台などで見る『放浪記』にも、別れた男を訪ねて瀬戸内海の因島に赴く林芙美子が描かれていたはず。
自分を捨てたはずの男に会う理由は金の無心。
芙美子は20歳、新劇の俳優、田辺若男との同棲中で貧乏な田辺のために、節操もなく初恋の男にわざわざ因島まで金を借りに来たというわけだ。
程なく金の工面に成功し得意満面で帰宅してみると浮気現場に遭遇してしまう。
『放浪記』にはこうある。
 
「あなたの体臭は、七年も連れ添った女房や、若い女優の臭いでいっぱいだ。あなたはそんな女の情慾を抱いて、お勤めに、私の首に手を巻いている」


「ああ、淫売婦にでもなったほうが、どんなにか気づかれがなくて、どんなにいいか知れやしない」
 
そのとおり!
いや、失礼。
 
芙美子が生涯、どれだけの男を知っていたか分からぬが本人はこうも言っている。
 
「私は男にはとても甘い女です」
 
田辺談に曰く。
 
「床へ入る時、帯をといてぱっと前をはだけた」
 
しかしそんな同居生活も僅か3ヶ月で破綻。
その後、暫く大学生と同棲した後、詩人、野村吉哉という男と同棲。
給料を貰って家に帰ると、野村の愛人からの手紙を見つけるという例の件の男だ。
失礼ながら芙美子という女性は男の私から見てそれほど魅力的な女とは思えぬ。
一度、芙美子の映像を見たことがあるが、そのときもやはり同じような感想を持った。
 
ただ、鍋底を這うような辛酸な生活を送った芙美子にすれば、男は生きる糧でもあり道具でもあったのかも知れぬ。
それに何と言ってもあの文体。
比喩などが非常に上手くお手本にしたいぐらいだ。
その芙美子を求めて、20歳の頃だったか、尾道までわざわざ出向いたことがあった。
芙美子ファンとしてはどうしても訪ねてみたい地だろう。
同時代の作家、平林たい子女史は言う。
 
「ますます性的アナリストになった」

 

ブログ村・参加しています。

ポチッ!していただければ嬉しいです♡ ☟