愛に恋

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東京新大橋雨中図 杉本章子

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本書は、第100回直木賞受賞作(1989年)で、しばしば最後の浮世絵師などと言われる小林清親を扱った時代小説だが、これがまあ、本当によく出来た作品で驚いた。

時代考証や言葉使いなど、まるで江戸、明治に生きた人が書いたのではないかというぐらい、もう文句なしの直木賞受賞作ではなかろうか。
著者の略歴を見るとノートルダム清心女子大学文学部国学科、金城学院大学大学院修士課程修了とあるが、然し、2015年12月4日、乳がんで62歳の人生を既に閉じている。
 
因みに小林清親とは下のような絵を描く人で、従来の錦絵に西洋の遠近法を取り入れた手法で、これが予想外に売れ一躍人気絵師になったようだが、現代に生きる私が見ても、この寂とした風景が、失われた善き時代を偲ばせて郷愁をいざなう。
 
内容は虚実織り交ぜて書いているのだろうが、ストーリとしてはどこまでもよく出来ている。
本当に天晴れな時代劇で非の打ち所がない。
 

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