愛に恋

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総員玉砕せよ!  水木しげる

 
何でも三島由紀夫は大の漫画好きで『劇画における若者論』の中でこんなことを書いている。
 
「私は自分の小学生の娘や息子と、少年週刊誌を奪ひ合って読むやうになった」
 
私とて当然、子供時代はあったわけで、テレビアニメの第一世代たる年齢でもあり、それこそ、鉄腕アトムジャングル大帝鉄人28号巨人の星、明日のジョー、とにかくアニメと名の付くもの、もちろん外国アニメを含め、何から何まで見ていた。
そうそう、テクマクマヤコ~ンなんて、魔法使いサリーまで見ていた。
 
アニメの他にも人形劇のひょっこりひょうたん島や、マグマ大使ウルトラQウルトラマンウルトラセブンと中学を出るまでは、その熱が冷めることは無かったが、不思議と卒業後にはピタリと止まってしまい、数年後に発売された『同棲時代』と『明日のジョー』の最終回、つまりバンタム級世界チャンピン、ホセ・メンドーサとの、あの感動的な試合を読んでこの方、今日に至るまで漫画というものを一冊も読んだことがなかった。
 
余談だが、昔、『鉄腕アトム』の実写版というものがあったが、これは確かにくだらない。
 
しかし、先日行った古書店水木しげるさんの『総員玉砕せよ!』を見て、つい買ってしまった。
水木しげると言えば何と言っても『ゲゲゲの鬼太郎』だが、年表を見ると、初のテレビアニメ化は昭和43年とある。
楳図かずおの影響で、お化け物が苦手だったが、『ゲゲゲの鬼太郎』だけはよく見ていたと思う。
その水木さんが南方戦線に従軍していたと知ったのは、そんな昔のことではないが、それに関連するものは1冊も読んでいなかっただけに、これを機会にと手に取ったわけで。
 
ある面、漫画の方が状況がよく伝わるとも思うが、確かに兵卒から見た、日本兵の無意味な死は、あまりにも精神論に頼り過ぎた結果なのだろうと思う。
これは、戦後になって陛下も同じことを述べている。
あの当時、こんなことが言われていたと思う。
 
「兵の命は鴻毛より軽し」
 
鴻毛とは、まあ、鳥の羽毛のようなもので極めて軽いの意味だが、失敗したら自決、生きて帰って来たら自決、最後は降伏ではなく玉砕。
例えばスターリングラード攻防戦に於けるドイツ軍の場合、第6軍のパウエル元帥を含む96,000人が、最後の突撃も無く降伏している。
独ソ両軍の死傷者はドイツ軍85万、ソ連軍120万と、途方もない数だ。
 
本間雅晴中将が攻めた、フィリピンのコレヒドール要塞に於けるアメリカ軍の捕虜はウェインライト中将を含め約83,000人。
 
シンガポールの戦いでは山下大将の軍門に下ったイギリス軍のパーシバル中将を含め約80,000人の将兵が捕虜となっている。
それに対しミッドウェー海戦以降の日本軍の戦いはどうだ!
ガダルカナルペリリュー島サイパン硫黄島、沖縄、インパール作戦とまあ、飢餓、マラリア塹壕戦と最後の一兵まで戦う。
『貝になりたい』の中でフランキー堺が言っているが。
 
「日本軍にとって一等兵二等兵は牛や馬と同じなんですよ、牛や馬と」
 
確かにそうだ、そんな扱いを受けてまで戦いたくない。
まさに水木しげるさんの言いたいことはそこだろう。
元大統領の父ブッシュなどは載っていた飛行機が撃墜され、海面に浮きながら救助を待ち、捜索機がやって来て助けられたという。
しかし、日本軍ではそんなことはないのだ。
どこの島でも悲惨な戦いがあるばかり。
 
輸送船が沈められ、補給が途絶えたらどう戦えばいいのか、初戦の勝利に気をよくした大本営は、あまりにも占領地域を広め過ぎた結果に招いた悲惨な末路。
その一兵卒が見聞した体験記を漫画はよく語っている。
あとがきで水木さんは、書かれている90%は事実だと言っている。
兵に死を強要しておいて、参謀は後方に退く。
これが事実なら、それは本末転倒と言えよう。
 
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