初版は昭和46年3月で、その改訂版が2006年の4月に限定復刻され購入したわけだが、有本芳水という人は詩人、歌人としても有名で文芸記者の主筆として明治、大正、昭和と三代に渡り多くの文人達との交遊録がここに書かれている。
しかしそれにしても錚々たるメンバー!
竹久夢二。
ざっとこのお歴々と交遊があった人が居たなんていうこと自体が驚きだ。
大町桂月の話しも面白い。
手ごろな青竹の節を抜き、最下部だけは残し、青竹には酒を入れて外出する。
それを杖にして歩き、路傍に佇んでは酒を飲み酔えばコロリと何処ででも寝る。
昭和45年8月12日午前2時、西条八十は夜の散歩から帰って眠り続けているうちに息が絶えた。
ということは三島事件の少し前ということになる。
啄木の逸話はどう見たらいい?
給料を貰って帰宅の途中、急に花を買いたくなった。
そこで給料の半分で花を買って家に帰る。
妻の節子は米代、家賃があるので給料はと訊く。
すると花を買ってしまったと答える。
唖然とする節子に啄木はこう言ってのける。
「まあ花を見なさい、綺麗じゃないか」
日本の近代詩壇は、島崎藤村、土井晩翠によって黎明の鐘が鳴らされ、薄田泣菫、蒲原有明によって基礎が作られ、北原白秋、三木露風によって成熟してきたが、それら全ての人と交流があったなんて将に文壇史の語り部だ。
それにしても面白い一生だっただろうに。
槿花一朝の夢(きんかいっちょうのゆめ)
人の世の栄華の儚いことのたとえ。つかのまの盛り。 むくげの花が朝咲いて、夕暮れには散ることからいう。
樋口一葉の頁に載っていたが美しい言葉だ。