愛に恋

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死刑囚最後の日 ヴィクトル・ユーゴー

 
以前、『死刑全書』という分厚い本を読んだことがある。
世界で行われてきた、死刑に関する実例書で、それはもう事細かに書かれていて、おぞましさに読むに耐えない本だ。
人類は極悪人に対し、または冤罪、魔女狩りにおいても、如何に苦痛を持続させる死に方を研究してきたようだ。
新聞の書評には、この手の本は隠れてエッチ本を読むのと同じような後ろめたさを秘めている、ということが書かれていた。
 
第二次大戦後、アメリカはナチが行った残虐行為が同じ人間として理解できず、人は何処まで残酷に成り得るのか研究したことがあった。
暗黒の中世時代の死刑などは、身の毛もよだつような方法が山とあり、今日では考えられないほど残酷だ。
 
そこでヴィクトル・ユーゴーだが、死刑廃止論者だったようだ。
ギロチンに対しても、かなり否定的な考えを持っている。
ギロチンは、そもそも人道的な立場から死刑囚に余分な苦痛を与えないため、ギヨタンという人が議会に提案したもので、設計製作担当は別人だが、試行錯誤の後、あのような形になった。
 
本書は、あたかも死刑囚の獄中記のように、一人称で書かれている。
どこまでも死刑囚の立場になって物語りは推移してゆき、この男を殺さなくてはならないほど、フランスには空気が少ないのかと言わしめている。
死刑囚には母、妻、子が居るが、本人の名前は勿論、年齢、職業、罪名などはあえて書かれていない。
読者の同情を買うように、ただひたすら最期の時を待つ心境だけに焦点を当てている。
公開処刑に対しても批判的だったのか、死刑を忌むべき制度として排斥したいとユーゴーは語りたいようだ。
 
「革命の時には、切り落とされる最初の首に注意しなければいけない。それは首に対する貪欲心を民衆に起こさせる」
 
確かに!
群集心理は怖い。
ユーゴーの嫌ったギロチンこそは今の世から消えたが、現在も残る死刑制度のあり方にはどのような見解を述べるか、一言聞いてみたい。
しかし、これは名言だった!
 
実際、革命はめったに人間の血を惜しまない。社会の葉を刈り、枝を刈り、頭を刈るために到来した革命にとっては、死刑はもっとも手放しにくい鉈の一つである
 
鋭い指摘だ。
 
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