しかしあろうことかナポレオン三世本人が捕虜となりフランスは降伏。
物語は占領された街を捨て、正式な出発許可書を貰った10人のフランス人の自己中心的な虚栄や愚劣さを痛烈に批判したモーパッサンの出世作で、『脂肪のかたまり』とはフランス語でブール・ド・シュイフといい作中では娼婦の渾名として使われている。
目的地はフランス駐留軍の町、ル・アーヴル。
四頭立て乗り合い馬車で出発した乗客は貴族、修道女、革命家らと娼婦ブール・ド・シュイフ。
人間、窮地に立たされると露骨にエゴイズムが出るものなのか、途中、宿泊地となったホテルを占拠する敵将校から、翌朝出発を許可する条件として提示されたのは娼婦を一夜差し出せというもの。
誰からも蔑まれる立場の娼婦が、一夜、将校に体を委ねることによって活路が見出せるという展開に一同は陰に陽に、その要求を飲むよう娼婦に迫る。
人間社会の歪みや醜さを問いかける傑作らしいが、実のところ、私は最近までこの小説を知らなかったがタイトルの『脂肪のかたまり』とはまた蔑んだ題名ではないか。
意味するところは、即ち「肉」ということなのか。