歴史の証人 ホテル・リッツ (生と死、そして裏切り) ティラー・J・マッツェオ


1983年、Tacoという名前の怪しげなオランダ人が歌う『踊るリッツの夜』という曲がヒットしたことがあったがその後どうしているだろうか。
そのホテル・リッツに1997年8月、ダイアナ元皇太子妃が現れるわけで、生前最後の姿がビデオに残された。
その有名ホテルのリッツが・・・!
 
1941年、クレムリンにあと数十キロと迫ったドイツ軍は例年より早い冬将軍のため進撃が頓挫、欧州戦線の大きなターニングポイントになったが、1940年6月11日の時点では様相は逆転していた。
アルデンヌの森を抜けたドイツ軍はパリから50キロの地点まで迫り、フランス政府は一夜にしてパリを引き払い南西部のボルドーに避難。
翌日のラジオ放送では男性に首都から離れ捕虜とならぬよう命令が下る。
パリは大パニック、首都陥落後、女たちは敵の戦利品にならぬよう脱出。
人口の70%、200万近い人が幹線道路に殺到。
ベルギー、オランダからの避難民の列に加わったが時すでに遅し途方もない渋滞に巻き込まれた。
 
この場面、よく映画などで見ますね。
一本の田舎道を永遠と続く避難民目がけて上空からメッサーシュミットが急降下。
道路を埋め尽くした避難民は一斉に脇の畔に身を潜める。
そこを低空飛行で機銃掃射するメッサーシュミット
 
ホテル・リッツもパニックと無縁ではなく6月12日、ドイツ空軍はパリに焼夷弾を次々に落し、包囲攻撃が迫っているように思えた。
当時の支配人はスイス人女性のマリ・ルイーズ。
閉じるか開けるか決断を迫られたルイーズはスイス国籍の中立性を楯に営業続行。
と、ここまでは面白そうに見えるが、本書の登場人物は圧倒されるほど多く、とてもじゃないが着いて行けない。
 
ドイツ本国から届いたゲッペルスの指令はホテル・リッツは贅沢なままであるようにというものだったがドイツ軍は90%の値引きを求めて、その結果、リッツではゲーリングを始め占領軍の高級将校とフランス人、または各国の著名人が宿泊するという稀有な現象が起きたようだ。
先にも書いたが有名無名を問わずあまりの数の登場人物には驚くが、一応、有名人だけは書いておく。
 
ヴィルヘルム・カナリス提督
ウィンザー公爵夫妻
ココ・シャネル
 
と、彼らの危険な出会いと驚嘆すべき歴史を描いているわけだが、相互関係が煩雑で分かり難い、が意外な事実も書かれている。
キャパとバーグマンの恋仲、20年代ホーチミンが調理場で働いていた。
ドイツ軍人を愛人にしていたシャネル、尋問に対しの返答は。
 
「この年で愛人を持てるチャンスを手に入れたら、相手のパスポートなんて見るものですか」
 
そればかりか1910~1920年までは高級娼婦と噂され売春容疑で取り調べを受けたことも。
なかなかやるね!
 
同じくドイツ軍将校を愛人に持った女優で『天井桟敷の人々』に出演したアルレッティは・・・。
 
「心はフランス人だけど、私のあそこは国際的なの」
 
ところで占領下のパリでは売春宿が栄え、6倍になったとあるが連合軍がパリを解放するとナチに強力的だったフランス人女性2万人が頭を剃られ、何と8万人のドイツ人を父に持つ子供が生まれたという。
つまり、GHQ占領下の東京とはかなり違う現象だったわけか、確かに戦後、鬼畜米英のスローガンもどこ吹く風、所謂、パンパンという女性も俄かに出現したが占領軍が去ったあと丸刈りにはならなかったし、接収されたホテルでは殆ど何も起こらなかった。
 
しかし、読書とは本当に禁欲的なものだ、本書を読むのはかなり苦しかった。
因みに著者は女性。
 

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