蜩ノ記 葉室麟

 
第146回直木賞受賞作、なるほど、清々しい感動小説でした。
武家言葉など身に染み入るようで、某(それがし)感服仕った次第であります、と言いたくなる見事な出来栄え。
拙者にとっては久々の時代小説。
 
以前、 藤沢周平原作の蝉しぐれという映画を観たが、どちらの作品にも共通するのは武士の一分を貫くということだろうか。
家督相続と側室問題などが複雑に絡み合った時代劇ミステリーで、一貫して清廉潔白、全くの濁りがなく死に対しても潔い。
武家がみなこのような姿勢であったとは思わないが素晴らしい人格者として書き上げている。
切腹を前に敬愛する和尚との最後の対話。
 
「ならば、もはや思い残すことはないか」
「もはや、この世に未練はごさりませぬ」
 
「さて、それはいかぬな。まだ、覚悟が足らぬよいじゃ」
「ほう、覚悟が足りませぬか」
 
「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」
「なるほど、さようなものでござりまするか」
 
僧籍に身を置くわけでもない作者がよくここまで書けたものだ。
時代小説には悟りと言うものも必要なのだろうか。
即ち、
 
「世を去るべきかどうかが問題ではない。去ると決まった以上はその日に向けて人としてどう生きるのかが肝心で、その一点から真価は定まる」
 
葉隠には「武士道とは死ぬことと見つけたりとあるが私には到達出来ない悟り。
 

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